2021 Fiscal Year Research-status Report
環境の安全手がかりの知覚が心拍変動と共感的関心に及ぼす調整効果の検討
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21K13675
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
日道 俊之 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 講師 (80800995)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 安全手がかりの知覚 / 共感性 / 孤独感 / BMI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,周囲の環境を安全だと知覚すること(安全手がかりの知覚)が,副交感神経系と共感性の関係を調整するか否か検証することを目的としている。2021年度は,(1) 安全手がかりの知覚に関わるとされている諸要因と共感性の関係についての調査研究,(2) 安全手がかりの知覚尺度の開発のための項目収集を行った。 (1)の調査について,本研究では安全手がかりの知覚と共感性が逆U字型の関係を示すと予測している。先行研究(Brosschot et al., 2017)から,安全手がかりの知覚に関わる要因として肥満や孤独感,社会経済的地位などがあげられているが,これらの変数と共感性が逆U字型の関係にあるか否か検討した研究はない。本調査ではウェブ調査により,その可能性を探索的に検討した。ウェブ調査では,従属変数である共感性と,説明変数である社会的競争への不安,客観的・主観的社会経済的地位,孤独感,主観的健康感,曖昧さへの耐性,身長や体重などの変数への回答を求めた。その結果,一貫して孤独感は共感性と線形な負の関係にあること,BMI(body mass index)は共感性と逆U字型の関係にあることが示された。これらの結果は,孤独感の関与する社会的な安全手がかりの知覚は共感性と線形の関係,BMIが関与する身体的な安全手がかりの知覚は逆U字型の関係にあると解釈できる。今後は,これらの結果が頑健か否か,事前登録研究により明らかにする予定である。 (2)の調査について,直接的に安全手がかりの知覚を測定する尺度は開発されていないため,本調査ではその尺度を開発するために,自由記述による項目の収集を行った。本調査はウェブ調査にて実施し,「あなたが『自分は安全・安心だ』と感じた場面はどのような場面でしたか」という質問に対し,自由記述での回答を求めた。本調査の結果は,現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度では,安全手がかりの知覚に関する諸要因と共感性の関係を探索的に検討し,それらの要因の中でも特に共感性に関わるであろう要因を特定できた。この結果は,安全手がかりの知覚尺度の信頼性・妥当性を検証したり,当該尺度と共感性,副交感神経系の関係性を検証していくうえで重要となると考えられるため,一定の成果は得られたと判断できる。 一方で,安全手がかりの知覚尺度に関する自由記述の分析に時間がかかり,未だ項目を創出することが出来ていない段階であるため,進捗はやや遅れていると判断せざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には,2021年度で収集された自由記述データについて,KJ法やテキストマイニングを用いた分析を行い,安全手がかりの知覚尺度を開発する。さらに,作成された尺度について複数回調査を行い,項目の選定や因子構造の決定,信頼性・妥当性の検証を行っていく予定である。最終的には,2022年度に安全手がかりの知覚尺度を確定させ,学会発表や論文執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により,学会や研究会が全てオンラインで実施され,旅費が発生しなかったことが次年度使用額が生じた理由である。2022年度以降は,生じた次年度使用額を関連データの調査費用に充て,当初の研究計画よりも研究範囲を拡大させていく予定である。
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