2021 Fiscal Year Research-status Report
中学生の集中力と自己管理能力を鍛えるスマートフォン依存改善プログラムの開発
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21K13685
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
榊 浩平 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60879675)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インターネット / スマートフォン / 依存 / 介入 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
いつでもどこでも手軽にインターネットへ接続できるスマートフォン(スマホ)は近年急速に私たちの生活に浸透してきた。スマホは便利なデバイスである反面、過度な長時間使用による依存症状が問題視されている。先行研究においても、スマホの使用時間が長い子供ほど学業成績や学力の基礎となる記憶力や注意力などの認知機能が低いことが指摘されている。しかし、どのような能力を鍛える介入が子供たちのスマホ依存改善に有効であるかは明らかになっていない。そこで本研究は、脳科学的根拠に基づくスマホ依存改善プログラムを開発し、介入研究と追跡調査によってその有効性を示すことを目的とする。具体的には、(1)脳科学的知見を基に集中力と自己管理能力を鍛えるスマホ依存改善プログラムを作成し、(2)ランダム化比較試験により介入の有効性を評価し、(3)追跡調査により持続効果を検証し、個人差を考慮した介入効果の予測モデルを構築する。 2021年度は、脳活動計測実験の実施に向けて必要な準備を整えた。具体的には、まず先行研究の文献調査を行い、脳活動計測実験の手続きや実験条件に関する詳細な検討を行った。次に、所属研究機関で開催された研究会にて当該研究計画の内容について口頭発表し、脳科学・教育学・心理学分野の研究者から意見を得た。得られた知見を基に脳活動計測実験の手続きを確定させ、研究計画の実施に必要な倫理審査の申請書類を作成した。また、脳機能計測実験に使用する認知課題の実験プログラムを作成した。その他の実績として、宮城県内、福島県内、千葉県内の教育委員会主催の講演会にてスマホ使用習慣と学力の関係をテーマとした講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、脳活動計測実験の実施時期に関して計画を修正する必要があった(詳細は「次年度使用額が生じた理由と使用計画」欄に記載)ものの、次年度に実施する脳活動計測実験に必要な準備を計画通りに整えることが出来たため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度における研究への取り組みについて、脳活動計測実験により集中力と自己管理能力を鍛える介入課題について検討する。健康な中学生30名を対象に、認知課題を遂行している際の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって計測する。認知課題は全て高い信頼性と妥当性を有し、国際的に広く用いられているものを使用する(例:数字抹消課題・ストループ課題など)。脳機能画像解析の結果、集中力低下と関連する脳領域の活動抑制効果が高かった課題、感情や行動の制御に関わる抑制機能を司る脳領域の活動が高かった課題を介入プログラムへ採用する。当該研究期間内に得られた成果をまとめ、国内外の学会・研究会および査読付国際学術誌などで発表する。 本研究により、集中力と自己管理能力を鍛えるスマホ依存改善プログラムが確立されれば、教育現場における脳科学的根拠に基づいた適切な指導法の検討や、従来の臨床心理学的手法と組み合わせたスマホ依存者への新たな治療法の開発へ繋がると期待される。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、被験者としてご協力いただく中学生の通う学校が冬季休暇にあたる2021年12月~2022年1月に全ての実験予定を集中させてデータの取得を完了させる予定であった。しかし、当初の想定に反し上記の期間にまん延防止等重点措置が発出されるなど感染症拡大のリスクが高まり、研究の実施が困難となった。そこで、2022年度は実験予定を長期休暇に限定せず、実施が可能と判断される状況の時期に週末を利用してデータ取得を完了させる方針へと変更した。 実施時期の変更に伴い、2021年度に実施予定であった脳活動計測実験のために必要な被験者謝金,装置利用料,心理検査・心理質問紙の購入費用を次年度使用額として2022年度へ繰り越した。研究計画の修正は脳活動計測実験の実施時期のみで、内容について大幅な変更はないため、2022年度には未使用の繰越額を含めた全額を使用する計画である。
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