2021 Fiscal Year Research-status Report
学習が成立するまでの過程におけるメタ認知の役割の解明
Project/Area Number |
21K13695
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 剛 日本工業大学, 共通教育学群, 講師 (50805679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メタ認知 / 記憶 / 学習 / 計算モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
計画1年目である2021年度は,(1) 3件の記憶実験と,(2) 計算論モデリングに関するレビューを行った。記憶実験は,記銘後に「あとで思い出せる」といったメタ認知判断である既学習判断の枠組みであった。計算論モデリングのレビューは,ヒトの記憶過程の計算モデルと,自身の活動への確信度判断の計算モデルが主である。 (1) 記憶実験について,予備実験1件と,予備実験の結果選定された刺激を用いたメタ記憶の実験を2件実施した。二つの実験では英語ネイティブを対象に記憶実験を行ったが,その準備として記名材料の難易度を調整する必要があった。そのため,予備実験では,720のローマ字表記された日本語単語とそれに対応する英単語のペアを,800名に45ペアずつランダムに割り振った。2件の実験では,選定された日本語と英語のペアについて,共通してペアを学習した後に「あとで思い出せるか」の判断が求められたが,このとき,判断の範囲について制限が設けられた。2件の実験の違いは,記名するペア数と,この制限される判断の範囲であった。どちらの実験においても1,000名の参加者があった。 (2)計算論モデリングについては,ヒトの記憶・学習過程における先行研究のレビューと,メタ認知判断の中でも確信度評定に関する先行研究のレビューが行われた。特にヒトの記憶や学習における計算モデルの提案は教育・認知心理学だけでなく,神経科学の広い分野に渡るため,ただまとめるのではなく,実際のデータの整合性を検討するなど,慎重に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は,すでに収得していたデータから新規モデルを提案した論文を発表する計画があった。計画の通りに投稿したが,掲載に至っていない。ただし,これは不採択になったのではなく,雑誌側の査読過程で一次的なトラブルである。現在も解決に至っていないため,相談の上,投稿先を変更する可能性も検討している。 なお,新規データの取得とその発表準備に関しては計画通りに順調に進んでいる。上記論文を一部引用する予定があったが,それはデータ分析のモデル比較といった研究の一部分であるため,新規データそのものの分析や計算モデルの提案といった本計画の根幹部分に大きな支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には,2021年度に実施して取得した記憶実験のデータについて,いくつかの学術大会で発表し,議論の機会をもつ。このとき,先行研究との比較のために,計算論モデリングの適用と行った議論よりも,心理学の記憶およびメタ認知実験として妥当性の議論を優先する予定である。 また,すでに収得していたデータと,上記の記憶実験によって得られたデータを用いて,ヒトの記憶とそのメタ認知判断に関する計算モデルを提案する。これらのモデルの提案とデータへの適用については論文として,雑誌への投稿へ至るよう計画している。 さらに,新規の実験として様々な強化学習を通した記憶の定着の過程について検討するために,2021年度と同程度のサンプルサイズを想定した実験を実施する。
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Causes of Carryover |
2021年度で計画していた論文が掲載に至らなかったためである。掲載に際して当該論文をオープンアクセスとするための費用として計上する予定であった分の経費が差額として残っている。 2022年度においても,引き続き当該論文の掲載やオープンアクセスとするための費用に充てる。一方で,再度審査過程の問題が生じた場合は雑誌を変更する可能性がある。この場合は,新規論文の掲載にかかる費用や,英文校正にかかる費用になど,本計画における他の論文の投稿・掲載のための費用とする。
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