2023 Fiscal Year Research-status Report
ASD男性の妻への支援に向けた実態把握とアセスメントツールの開発
Project/Area Number |
21K13717
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
西尾 祐美子 畿央大学, 教育学部, 講師 (50801594)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 夫婦関係 / 心理的アセスメント / 子育て / カサンドラ症候群 / 支援ニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
「カサンドラ症候群」は,自閉スペクトラム症(ASD)など共感性や応答性に困難を抱える人のパートナーが身体的・心理的症状を呈する状態を指すが,医学的な診断名ではなく学術的根拠も乏しい。家庭生活で夫に情緒的ケアを求める妻にとって,夫がASDであることは夫婦関係に重大な影響を及ぼすうえ,ASDの障害特性は外見上わかりにくいため周囲から理解を得るのも難しい。そこで本研究は,ASD男性の妻に対して,どのように困難をアセスメントし,支援していくべきかという「問い」のもと,ASD男性の妻の主観的体験から不適応の実態と支援ニーズを解明し,問題をアセスメントするための尺度を開発することを目的に実施している。 2023年度は,ASD男性の妻が抱える困難の実態および支援ニーズの把握を目的に,ASDの医学的診断を受けている男性の妻10名を対象に実施したインタビュー調査の結果について,日本心理学会第87回大会にて発表を行った。夫のASD特性による子育てへの影響を検討するため,子ども有りの7名を,未成年の子がいる子育て家庭と,成人の子がいる家庭に分け,子ども無しの家庭と比較した結果を報告した。 子どもがいる家庭では,「子ども」が最頻出語であり,家庭では夫婦関係と子どもは切り離せないことが窺え,子育て家庭では日常生活での困難な体験が多く語られた。具体的には,夫を理解しきれない自責感や夫のに母子で振り回される様子,金銭感覚の違いや金銭トラブルに関しての語りが特徴的であった。サポートについて,子どものいる家庭では,夫と同様に発達障害のある子どもをきっかけに同じ境遇にある人とつながったり,子どもの主治医や先生に相談したりすることがサポートとなっていたことから,ASD男性を夫にもつ妻は,子どもがいると子どもを媒介して間接的にサポートを受けている一方,子どもがいないと支援につながりにくいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は7月末まで育児休業取得中であったため,8月から研究を再開した。また,2023年度に学会発表を行った際に受け取った意見や指摘ををもとに,研究2で行う予定のアンケート調査の内容を見直しているため,やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
学会発表を通じて,カサンドラ症候群については夫のASD特性だけでなく,妻の心理特性も関連して生じる,すなわち夫婦の相互作用によって生じるため,夫のASD特性だけでなく妻自身の心理特性も考慮する必要があるという結論に至った。そこで,研究2のアンケート調査では,妻自身の心理特性も測定できる尺度や,夫のASD特性に関連する行動を妻がどのように捉えているかを測定できる項目を検討している。 2024年度上半期には質問項目を確定したうえで,下半期に調査委託会社に依頼したうえでオンライン調査の実施を予定している。
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Causes of Carryover |
研究2で実施するアンケート調査の内容を見直すこととなり,調査実施が延期となってしまったため予算を執行できなかった。また,育児のため国際学会への参加が困難であった。
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