2022 Fiscal Year Research-status Report
Impact of executive function on psychological detachment and mental distress of workers
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21K13723
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health,Japan |
Principal Investigator |
木内 敬太 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 過労死等防止調査研究センター, 特定有期雇用職員 (10791949)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心理的ディタッチメント / 情緒的反芻 / 問題解決の思索 / 仕事関連反芻尺度 / 尺度開発 / 尺度翻訳 / COSMIN / 妥当性 |
Outline of Annual Research Achievements |
メンタルヘルス不調が悪化する過程には、仕事時間外に仕事との距離(心理的ディタッチメント)が取れないことや反芻(仕事のことを考えてしまうこと)が関わっている。しかし、人が必要と思っても休めず、仕事のことを考えてしまうことの機序については十分わかっていない。本研究では、この過程への実行機能(状況を概観し、不要な反応を抑え、効果的に意識を切り替える脳の機能)の関与を検証する。本年度は、日本語に翻訳した仕事関連反芻尺度について、COSMINのガイドラインに基づき、信頼性と妥当性を検証した。認的因子分析の結果(n=309)、15項目中2項目で2因子への因子負荷が認められたが、大方原版と同様の3因子構造(情緒的反芻(AR)、ディタッチメント(DTM)、問題解決の思索(PSP))において、事前に設定したモデル適合度の基準を満たした(CFI=0.963, RMSEA=0.051, SRMR=0.058)。事前の予測通り、ARとDTMの負の相関、反芻尺度(高野・丹野, 2008)の正の相関、PSPと内省尺度(高野・丹野, 2008)の正の相関、DTMとリカバリー経験尺度の心理的ディタッチメント(Shimazu et al, 2012)の正の相関が認められた。また、ARと疲弊尺度(熊谷ら, 2021)の正の相関、Well-being尺度の負の相関、DTMと疲弊尺度の負の相関、Well-being尺度の正の相関が認められた。アンカー項目で変化なしと答えた対象者のみのデータを使って、再検査の信頼性(ICC)を求めたところ、ARは0.86(n=121)、PSPは0.79(n=127)、DTMは0.73(n=117) であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定していた通りに研究計画を遂行しているが、進捗は予定よりも1年ほど遅れている。理由としては、公私にわたる状況が変化する中で、予定していた通りの作業時間が確保できなくなったことや、調査や解析のために想定よりも多くの時間がかかったことが挙げられる。そういった中で、COVID-19のパンデミックの影響を強く受けた1年目の遅れを取り戻すことができなかった。さらに、時代の変化や技術の発展が目覚ましく、COVID-19のパンデミック前の想定を超えて、オンライン測定へのコンピュータ・エージェントの活用や、チャットAIの応用可能性が高まっている。そのため、認知機能課題のオンライン実施に当たって事前に検討すべき内容が予想外に増え、実験用システムの開発に時間がかかっていることも遅れの原因である。ただし、遅れてはいるものの、研究自体は進展しており、徐々に成果が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初2年目、3年目に想定していた予備実験と本実験を進める。大方実験システムはできているので、2023年度初頭の倫理審査に間に合わせ、年度内の完遂を目指す。計画段階では本調査は2波のウェブ調査を予定していた。しかし、因果関係の解明には3波以上の測定が必要なことから、予算の範囲内で対象者数を調整し、測定の回数を増やす方針である。幸い、COVID-19のパンデミックにより学会のオンライン開催が増え、多少、旅費から実験費用に予算を調整することが可能である。
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Causes of Carryover |
計画では本年度中に予備実験を行う予定だったが、昨年度からの持ち越しの計画もあり、重ねて、実験システムの開発も思うように進まず、実施することができなかったため。研究自体は予定していた手順で進めており、繰り越し分は予備実験の実施に使用し、もともと請求していた分については、本実験の実施に充てる。
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