2022 Fiscal Year Research-status Report
犯罪被害による同胞との死別を経験したきょうだいの回復に関する研究
Project/Area Number |
21K13728
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
太田 美里 香川大学, 医学部, 特命助教 (90885906)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 犯罪被害者遺族 / レジリエンス / 回復 / きょうだい / トラウマ / 意味づけ / 被害者支援 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,犯罪被害により同胞と死別したきょうだい(以下,きょうだい)のレジリエンスと心の変容を調査し,きょうだいの回復の様相を多角的な視点から明らかにすることを目的とした。本研究は3つの研究から成るが,現在は研究1(1-1,1-2)のインタビュー調査を実施している。 具体的には,研究1-1において,被害時~現在の,個人要因と環境要因の相互作用によって生じる意味づけを主軸としたレジリエンス(回復過程)を検討し,研究1-2では社会活動を行っているきょうだいを対象に,活動を実施するに至った心の変容過程を検討した。 インタビューでは,きょうだいの回復に重要であった自身の取り組みや具体的なサポート, きょうだい特有の心の変化及び心情等も明らかとなっている。また,現在被害に関する社会活動を行っているきょうだいからは,社会活動を行う親と異なる心情も示されている。 さらに,実際にインタビューを実施することを通じて,遺族からはその発達段階や心情の変化に応じたサポートの必要性が語られており,本研究の目的である「遺族の心情や回復過程の理解」を検討していくためには,発達的視点を加味したデータ分析等,当初の研究目的とは異なる視点からデータを分析する必要があることも明らかとなっている。インタビューを通じて,新たな視点から分析を行う必要性が示されたこと自体,本研究の大きな意義であると考えられる。 犯罪被害者遺族の中でも,きょうだいに対する研究は比較的乏しく,その支援にも課題が多い。本研究がきょうだいに対する心理的支援の発展に貢献できるよう,今後も研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の研究開始当初は,新型コロナウイルス感染症の影響があり,計画通りにインタビューが進められなかった。また,本研究は遺族や関係機関に対し,丁寧に研究説明を行い,最大限遺族の都合や心情を考慮してインタビューの日程を決定しているため,インタビューを実施するまでに十分な時間が必要となる。 したがって,当初の計画より研究が遅れているが,今後も対象者に配慮した研究となるよう最大限留意し、研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
同胞を犯罪被害により失った遺族は,当然ながら語ることも難しい体験をしているため,インタビューを実施すること自体が非常に困難である。そのため,当初計画していた対象者は20名であるが,そうした状況や研究期間を踏まえ,10~15名程度を目標に可能な限り時間をかけ,インタビューを進めていくよう研究計画を変更する。したがって,今年度内に研究1-1及び研究1-2をまとめられるよう努める。 また,研究2のきょうだいの家族関係については,今年度末から来年度8月頃を目途に再度インタビューを実施し,来年度内に結果をまとめていく予定である。 一方,きょうだいの「継続する絆」を検討することを目的とした研究3は,対象となったきょうだいの方から継続する絆に関する語りが乏しい様子がこれまでのインタビューでうかがえる。また、前述した通り,研究1で得られたデータを新たな角度から分析し,知見をまとめる必要性も生じている。したがって,研究1及び2で得られたデータを別の角度から分析し,研究3としてまとめる予定である。 具体的には,発達段階ごとに必要なサポートを検討する,社会活動を行う親に対する心情の検討などを考えている。こうした角度からのデータ分析は,当初の研究計画とは異なるが,きょうだいの心情や回復に関する理解を深めるという本研究の主要な目的を検討する上では重要と思われる。
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Causes of Carryover |
インタビューの実施が計画よりも遅延しているため、次年度使用額が生じた。今年度は、インタビューの実施を進めるとともにその分析、発表、備品等を準備することが必要であるため、助成金を積極的に使用していく。
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