2022 Fiscal Year Research-status Report
社会的フィードバックの学習促進効果に関する心理学的研究
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21K13744
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤井 佑実子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 研究員 (50638054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学習 / フィードバック / 表情 / ジェスチャー / 視知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の学習は他者の表情やジェスチャーなどの社会的刺激から影響を受ける。これまでの研究では、社会的刺激によるフィードバック(社会的フィードバック)が与えられることで、学習が促進されることが実験的に示されている。ただし、この社会的フィードバックによる学習促進効果は、課題内容やフィードバック刺激の性質などによって消失もしくは減退する可能性が示唆されている。そこで本研究では、社会的フィードバックによる学習促進効果がどのような要因の影響を受けるか明らかにすることを目的とする。 1年目にあたる令和3年度は、社会的フィードバックによる学習促進効果に関して調べるにあたり、学習中の脳活動に関する知見や視覚刺激の知覚特性に関する知見を充実させることを目指した。そこで、運動系列学習に伴う脳活動の変化についてや、物体の視覚的特徴の組み合わせを記憶するときの知覚特性に関して検討した。 2年目にあたる令和4年度は、課題の難易度が社会的フィードバックの学習促進効果に与える影響について心理学実験を用いて検討する予定であったが、それ以前に実験の設定に関わる知見や準備が十分とは言えなかった。そのため、物体刺激の知覚特性に関する研究を行った。また、フィードバックとする表情刺激を用意し、その感情価などの性質を検討するための予備実験を行った。さらに、課題の難易度の調整に関して検討するための予備実験を行った。 これまでの研究から、主に次のようなことが示唆された。第1に、潜在的運動系列学習の進行に伴い、刺激の視覚情報処理に関わる注意要求が減少することを、学習中の脳領域間の神経同期から捉えることができることを示した。第2に、物体の視覚的特徴と位置の組み合わせを正しく知覚することに影響する視覚情報処理上の要因を明らかにした。これらの研究の一部の成果については国際的学術雑誌や国内の学会にて発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の当初の研究計画は、学習課題の難易度が社会的フィードバックの学習促進効果に与える影響について検討することであった。しかし、その実施にあたって必要な研究や予備実験を行うにとどまった。その理由は、実験刺激や課題内容の設定に関わる知見が十分とは言えず、それらを研究することを優先させたためである。さらに、令和3年度に続き、令和4年度4月にも再び研究代表者の所属研究機関に異動があった。これに伴い、研究環境を整えることに時間がかかったことも研究の遅れにつながった。成果の公表の面では、国際的学術雑誌や国内の学会にて発表を行えているものの、当初の計画通りには研究が進んでいないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の当初の計画に遅れがあるため、まずはその遂行を目指す。具体的には、課題の難易度が社会的フィードバックの学習促進効果に与える影響について心理学実験を用いて検討する。なお、ここでは社会的刺激の中でも表情によるフィードバックを研究対象とする。そして実験では、連合学習課題や視空間運動系列学習課題の難易度の増加に伴って社会的フィードバックの学習促進効果がどのように影響を受けるかを、課題中の行動パフォーマンスや生体情報を測定することによって検討する。 さらに、ジェスチャーによるフィードバックが表情によるフィードバックと同様の性質を持って学習を促進するか明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画の補助的な研究や予備実験、さらに研究環境の整備に時間を要したため、当初当該年度に実施予定であった本実験を行うことができなかったことから、実験実施に要する費用や成果発表に関わる費用が次年度に繰り越されることとなった。必要な知見がある程度蓄積されたことから、次年度には当該年度に予定していた本実験を始めとして複数の実験を行う。 また、国内での学会発表を行ったが、新型コロナ感染症の流行状況を考慮して当初予定されていた対面での開催ではなくオンラインでの開催に変更になったため、その発表のための旅費が発生しなかった。この分の費用に関しては、次年度の学会参加に伴う旅費にあてる。
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