2022 Fiscal Year Research-status Report
自閉症者の社会的動機付け:脳機能実験とウェブ実験を用いた計算論的精神医学研究
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21K13748
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
角谷 基文 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (10802796)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 社会的動機付け / 予測誤差 / 計算論的精神医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、計算論行動科学、脳機能イメージング、オンライン実験の手法を用いて、自閉スペクトラム症(ASD)者における社会的報酬が社会的関わりへのモチベーションへと転化されるメカニズムの解明を目指す。本年度は、ASD者におけるモチベーションの生成過程を検討する目的で、1)ASD者は予測誤差に強く反応するのか、2)発達によりその傾向は変動するのかを検討した。6歳から30歳のASD者及び定型発達者(ASDではない)を対象に、リスクに関連した選択(例:100%の確率で4ポイント獲得か、50%の確率で8ポイントあるいは0ポイント)を用いたシンプルな確率学習課題をオンラインで実施した。その結果、予備的な解析の段階ではあるが、ASD者と定型発達者では、発達に伴うリスク選好性の変化が異なることが明らかになった。さらに、これらの選好性の違いは、予測誤差への選好性の差で説明できることが示された。しかし、仮説及び先行研究の結果とは異なる結果も見られた。先行研究では、人々はリスクを回避する傾向が強いことが示されてきているが、今回の研究では、リスクを好む参加者が多く見られた。この結果は、先行研究で用いている課題と本研究で用いている課題の背景である、実験後のボーナス金銭報酬に関連している可能性がある。また、今回のオンライン実験では、課題の説明を画面のみで行なったため、多くの実験参加者の正答率の低さ(例:100%の確率で4ポイント獲得できる選択肢と、50%の確率で4ポイントあるいは0ポイントを獲得できる選択肢間の選択で、後者を選択)が露呈した。今後は、zoomなどを用いて、参加者の課題の理解を促すアプローチをとっていく必要がある。また、今回は実験参加者の年齢などが群間で異なったため、それらを統制した環境で実験を進めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.上記の成果を国際研究会で発表し、本研究が基軸としている研究を実施している研究者(Dr. Yael Niv)から申請者の研究へ意見をいただいた。また、さらなる研究課題を実施するため、現所属組織において、本研究の倫理審査を通した。 2.昨年度から進めている他者との関わりに関するMRI実験の解析を進めている。 3.友人関係の側面から自閉症者の社会的モチベーションを検討し、論文を執筆し、出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果をさらに広げることを目的に、社会的相互作用を行う課題を実施する。倫理審査はすでに通すことができていることから、課題の作成及び実施に進める予定である。さらに、他者との関わりに関するMRI研究の結果と、オンライン実験の結果の統合を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は実験を実施することもでき、論文を出版することもできたが、昨年度の未使用金もあり、2年度分を使い切るには至らなかった。来年度実施する研究課題の倫理審査は通していることから、来年度はそれらを用いることで、実験及び研究を進める予定である。
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