2022 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症者の聴覚情報処理における大脳半球機能差の異常メカニズムに関する検討
Project/Area Number |
21K13753
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田村 俊介 九州大学, 医学研究院, 特任助教 (20883333)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経オシレーション / 統合失調症 / 大脳半球左右差 / 音声・音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 言語音声聴取時に左半球優位性の情報処理が働きにくいとされる統合失調症者を対象とした脳機能計測実験を行い, その異常が言語情報の処理異常を表すのか, 言語音声の持つ時間情報の処理異常を表すのかを検討することを通して, 聴覚情報処理における大脳半球機能差のメカニズムを議論することで ある。 当該年度は, 健常者及び統合失調症者から, 言語音声刺激, 音楽刺激, 言語音声と音楽の両方の要素を合わせ持つ刺激の時間変動に同期して生じる神経活動の大脳半球優位性を脳磁図で計測し, その解析を進めた。 健常者から得られた結果として, 音楽刺激の時間的特徴に同期して生じる神経活動(刺激の呈示頻度に同期して生じるデルタ帯域の神経振動および音のピッチに同期して生じるガンマ帯域の神経振動)に関しては, その周波数に依らず右半球優位となることを確認した。一方で, 言語音声刺激や言語音声と音楽の両方の要素を合わせ持つ刺激の聴取時には, 神経活動の周波数に依らず, 音楽刺激で見られたような右半球優位性が消失することがわかった。 時間の制約上, 統合失調症者からは言語音声刺激に対してのみ計測を行った。その結果, 統合失調症者では, 左半球においてのみ, 言語音声刺激のピッチに同期して生じるガンマ帯域神経振動が健常者と比べて有意に低下していることが分かった。 現時点では聴覚皮質においてのみの解析を行っているが, その他の幅広い脳領域での半球優位性を調べることができるように解析系の整備も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者に関しては, 研究計画で予定していたデータの取得が終了している。統合失調症者に関しては, 時間の制約もあって, 言語音声刺激に対しての神経活動のみ計測をしているが, 来年度以降にも計測を継続すれば予定していたデータの取得が可能だと考えられる。データ解析についても前年度に立ち上げた解析系を用いて, すでにデータの分析を終えており, 一定の結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
統合失調症者から言語音声刺激や言語音声と音楽の両方の要素を合わせ持つ刺激を聴取している際の神経活動を計測する。その結果に基づいて, 統合失調症者で左半球優位性の情報処理が働きにくいことが, 言語情報の処理異常を表すのか, 言語音声の持つ時間情報の処理異常を表すのかを検討する。
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Causes of Carryover |
統合失調症患者を対象とした脳磁図実験の実施が予定通り進まず, 予定通り費用が執行がなされなかったため次年度使用額が生じてしまった。残りの実験を実施するとともに, ただいま, 複数の論文の執筆を進めているため, それにかかる費用として使用をしていく予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Decrease in Gamma-band Auditory Steady-State Response in Patients with Treatment-resistant Schizophrenia: Schizophrenia Research2023
Author(s)
Kamiyu Ogyu, Karin Matsushita, Shiori Honda, Masataka Wada, Shunsuke Tamura, Kazumasa Takenouchi, Yui Tobari, Keisuke Kusudo, Hideo Kato, Teruki Koizumi, Naohiro Arai, Akihiro Koreki, Mie Matsui, Hiroyuki Uchida, Shinya Fujii, Mitsumoto Onaya, Yoji Hirano, Masaru Mimura, Shinichiro Nakajima, Yoshihiro Noda
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Journal Title
Schizophrenia Research
Volume: 252
Pages: 129-137
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 海馬回旋異常における構造的MRIの特徴の検討2022
Author(s)
向野隆彦, 山口高弘, 岡留敏樹, 山田絵美, 太田真理, 三笘良, 光藤崇子, 田村俊介, 平野羊嗣, 栂尾理, 萩原綱一, 磯部紀子, 重藤寛史
Organizer
第55回日本てんかん学会学術集会
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[Presentation] The imaging characteristics of incomplete hippocampal inversion2022
Author(s)
Takahiro Mukaino, Takahiro Yamaguchi, Toshiki Okadome, Emi Yamada, Shinri Ohta, Ryo Mitoma, Takako Mitsudo, Shunsuke Tamura, Yoji Hirano, Osamu Togao, Koichi Hagiwara, Noriko Isobe, Hiroshi Shigeto
Organizer
14th Asian & Oceanian Epilepsy Congress
Int'l Joint Research
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[Presentation] 治療抵抗性統合失調症における40Hz聴性刺激誘発脳波の検討2022
Author(s)
尾久 守侑, 松下 佳鈴, 本多栞, 和田真孝, 田村俊介, 竹ノ内一雅, 戸張維, 楠戸恵介, 加藤英生, 小泉輝樹, 新井脩泰, 是木明宏, 松井三枝, 内田裕之, 藤井進也, 女屋光基, 平野羊嗣, 三村將, 中島振一郎, 野田 賀大
Organizer
日本臨床神経生理学会第52回学術大会