2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13757
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 智治 (佐藤智治) 一関工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (30783120)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 色覚 / 視覚 / 心理物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの脳の初期段階における色情報表現は「色名」のような認知的な表現と一致しないため、脳内の色情報表現がどのような役割を持っているのかは未解明である。本研究では、方位選択・輪郭統合といった空間情報と組み合わせて、脳内色情報表現の役割を解明する。実験対象として、周辺刺激とターゲット刺激の方位の関係によって検出感度が変化する錯視現象:Collinear Facilitation(CF)を利用し、この錯視現象の背後に存在する色覚メカニズムを明らかにする。 2021年度は(1) CFが赤のみ、緑のみのような単一色相の刺激でも感度変化が生じるのか、(2) 心理物理学的逆相関法によってターゲット刺激に対する感度変化が画像化できるか、の2つを実施した。 (1) についてはこれまで反対色(赤ー緑、青ー黄など)の組み合わせで実施されてきたCFについて、周辺刺激を赤のみ、緑のみのような単一色相にして検出感度の変化を測定した。結果として、単一色相によっても感度変化が生じ、CFが生じることを明らかにした。また、感度変化は反対色の組み合わせと比較して改善や悪化、周辺刺激がない場合とほぼ等しいなど複雑な色情報処理が存在することが示唆された。 (2) についてはターゲット刺激に色ノイズを付加して実験を行い、ターゲット刺激の検出を促進するノイズパターンの画像化を行った。結果としてターゲット刺激と類似した縞模様が得られることがわかった。このノイズパターンを解析することで、CFの背後に存在する色覚メカニズムの空間的特徴も明らかにできると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画通り実験を実施し結果は得られているが、個人差が大きく脳内色情報表現を解明するには実験パラメータの制御が必要である。 単一色相の刺激によってもCFが生じることが示唆されたが、その色選択性に関しては個人差が大きかった。実験刺激に先行研究には含まれないエッジ成分が含まれており、これが個人差を引き起こした可能性が考えられる。したがって、実験刺激の作成方法を修正する予定である。 心理物理学的逆相関法による感度変化の画像化については、基礎統計に相当する解析によって脳内色情報表現が含まれている可能性が見られた。しかし、単純にノイズパターンを入力とした機械学習では実験協力者の応答を再現できていない。したがって、得られたノイズパターンを何らかの統計量に変換して機械学習を用いた解析を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
単一色相の刺激による実験では実験刺激の作成方法を修正する。令和3年度は無彩色を中心に赤・緑など反対色の組み合わせの縞模様を作成し、その後一方の色を無彩色にすることで単一色相刺激を作成していた。この作成方法はCFに関する先行研究と対応づけが容易だが、無彩色になる画像部分でエッジが発生してしまう。そこで、縞模様の色変調の中心を赤や緑にすることでエッジが発生しない単一色相を作成する。 心理物理学的逆相関法による感度変化に関しては、今回の刺激は縞模様であり、実験協力者は特定の空間周波数の情報を手掛かりにしていたと考えられる。そこで、得られたノイズパターンをフーリエ変換し、空間周波数の観点で解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
シミュレーションのための計算用ワークステーションは、実験データの基礎解析で実験協力者の応答再現ができなかったため購入を見送った。国内旅費に関しては学会がオンライン開催となったため予定よりも少額となった。 研究推進のためにバイアウト制度の活用や研究打ち合わせのための出張などに使用する計画である。
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