2022 Fiscal Year Research-status Report
層的バナッハ代数を用いたサイクルによる特異ホモロジー論
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21K13763
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三原 朋樹 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90827106)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | p進幾何 / p進ガロア表現 / Tate acyclicity |
Outline of Annual Research Achievements |
前回報告時点での定式化における解析的特異ホモロジーの性質を調べた結果、想定よりサイクルの種類が少ないことが分かった。そのため、前回の報告で述べたように完備群環を用いた余単体的対称による定式化から微調整を行った。 具体的には完備群環からの標準的な射の像の閉包による余単体的対象を定式化に用いることでサイクルの種類の少なさを解消した。定式化の変更にはsheafy性の再確認が必要だが、像の閉包のsheafy性は終域のuniform性を用いて先行研究に抽象的に帰着させることが可能であり、また別の完備群環との同型を取ることもできたのでそれにより具体的に示すこともできた。特に後者の帰着により、前回導入した完備群環のsheafy性を活用できるため前回からの定式化の微調整があまり大きな問題とならない。 また新たな定式化において、sheafy性だけでなくWeierstrass領域の具体的な記述も行った。これによりサイクルの計算が比較的しやすくなる。具体的にはサイクルの計算のためには空間をアフィノイドに分割してそこへの射を局所的に考えることになるが、Weierstrass領域の具体的な記述は局所的な計算を飛躍的に簡単にしてくれる。 現在注目している点は、p進周期環そのものより大きな環を導入して積分値を定式化すべきか否かである。p進周期環そのものはBanachな対象でないため、大きな環に変更してBanach性を担保することは議論をシンプルにしやすい利点がある一方、興味が強いのがp進周期環そのものであるため最終的にはそこからp進周期環への自然な射を合成して考える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回の報告で述べた通りに定式化の微調整を行い、新たな定式化に対しsheafy性やWeierstrass領域の具体的記述を行い、サイクルの種類が減りすぎていないことの確認を行えた。 この際に先行研究の抽象的な適用だけでなく前回報告した時点での結果を具体的に活用できたためsheafy性の議論がより見通しの良いものにできた。 サイクルの種類が減らないことを確認するための計算は本来sheafy性だけでは煩雑だが、Weierstrass領域の具体的記述が可能であることからより組み合わせ的な具体的計算が可能になった。 結果的にドラムコホモロジーとのペアリングまでは議論を進められていないが、それに用いるp進周期環の変更が必要か否かという新たな論点に気づくことができた。 また副産物としてsheafyな対象が複数得られたことも純粋に良い進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
p進周期環の変更が必要か否かについてより詳細な計算を進め、それにもとづいてドラムコホモロジーとのペアリングを考察する。 具体的な論点は、p進周期環の構成で用いられるO_Cの剰余環のフロベニウス逆極限R(をp可除群の指標群と再解釈したもの)の要素に対するlogをp進周期環でのlogとして定式化すべきか、指標を関数と思って関数のデータとしてlogを取ったものとして定式化すべきかの選択である。 前者は標準的な定義であり最終的に欲しいものである反面p進周期環がBanachでないことかたそのままでは扱いにくいという短所がある。後者はBanachな環を用いることができるため議論がしやすいという利点がある反面、最終的にはそこからp進周期環への自然な射の性質をある程度調べる必要が出てしまうという短所がある。 最終的に得られるp進周期は同じとはいえ、研究成果としてより明確に理解されやすく簡潔な議論で定式化を与えることが望ましいので、これらの選択は綿密な計算をもとに慎重に行うべきである。
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Causes of Carryover |
感染症に関する社会状況がもっと良くなれば研究集会への参加や研究者の招聘を予定していたが、まだ一研究者として余念を許さない状況であると判断し次年度に延期した。
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