2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13775
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川節 和哉 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (90853531)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 頂点作用素代数 / 共形場理論 / Kac-Moodyリー環 / 頂点代数 / 無限次元リー環 |
Outline of Annual Research Achievements |
頂点作用素代数は、2次元共形場理論の対称性を記述する代数系である。場の理論や表現論、モジュラー形式の理論、組み合わせ論、 テンソル圏の理論など様々な分野と関係する重要な代数系である。その中でも、平滑ないしC_2余有限と呼ばれる頂点作用素代数のクラスは、指標のモジュラー不変性という性質を持つことが知られており、頂点作用素代数の最も重要なクラスの一つである。平滑な頂点作用素代数を構成する手法の中に、コセット構成法というものがある。コセットは何らかの一般的な仮定の下にに平滑になると考えられているが、証明はされておらず、これを証明することは分野の大問題の一つとなっている。頂点作用素代数の一般化である頂点代数についても、平滑性やコセットの概念が自然に定義される。本研究では、コセットの平滑性が頂点代数の範囲ではどう見えるか確かめるために、平滑な頂点作用素代数において、平滑だが頂点作用素代数ではない部分頂点代数を考え、そのコセットの構造を調べている。前年度から引き続き、レベル1のA1型の主部分空間のコセットCについて、その構造を調べた。前年度までで有限生成でないことを証明し、極小生成系を決定していた。その生成系を用いて、CにおけるZhuのPoisson代数の構造を決定した。これより、Cは平滑ではないが、それとほぼ近い性質を持つことがわかった。さらに、Cの中心化代数が元の代数と一致することを示した。以上の結果を論文にまとめて、国際学術論文誌で出版したほか、研究集会等で研究発表を行った。また、A2型の場合や、レベルが高い場合、ランク1の格子頂点作用素代数の主部分空間に対して構造の計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レベル1のA1型の主部分空間のコセットについて、極小生成系を与え、ZhuのPoisson代数の記述や、ダブルコセットが元の代数と一致することを示すなど、決定的な結果が得られた。また、一般化主部分空間の構造の記述が進んでいる。今後得られた手法や知見を応用して研究を進めていくことが出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた手法や知見を応用し、高いランクやレベル、格子に付随する場合の主部分空間のコセットについて、構造の決定を進めていく。特にランク1の格子頂点作用素代数の主部分空間についての構造の分析が進んだので、そのコセットの極小生成元を決定することなどを目指す。
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Causes of Carryover |
前年度まではコロナ禍により研究集会の出席や研究打ち合わせの出張が制限された。その分については研究の進め方を工夫したり、オンライン研究集会やオンラインミーティングによって埋め合わせてきた。該当年度では状況が改善され、研究打ち合わせの出張を活発に行うことができたが、国際研究集会の開催状況などにまだ影響が残っており、次年度使用額が生じることになった。今後状況はさらに改善すると考えられるので、研究をより強力に進展させる予定である。
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