2023 Fiscal Year Research-status Report
多変数保型関数の数論幾何的研究とそのPicard数極大曲面への応用
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21K13779
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
平川 義之輔 東京理科大学, 創域理工学部数理科学科, 助教 (30896783)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Hilbert保型形式 / 奇数次Galois体 / 3次巡回体 / 偶ルート格子 / Klein型超曲面 / Picard群 / Nagell-Ljunggren曲線 / 絶対ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に、 (i) 多変数保型形式、特にHilbert保型形式の具体的な構成、及び (ii) Klein型超曲面のコホモロジー群、特にKlein曲面のPicard群の構造解明、の2つを中心に研究を進めた。 まず、(i) については、昨年度までに、比嘉陸氏(東京理科大)との共同研究で得られていた成果を精密化した上で学術論文としてまとめ、プレプリントサーバーで公開、学術雑誌へ投稿、及び研究集会で発表を行った。この論文は、奇数次Galois体上の偶ルート格子に関する基本文献として有意義である、と考えている。その後、この論文の内容をさらに発展させることを目指し、3次巡回体に精通している関川隆太郎氏(東京理科大)も加えて共同研究を継続した。その結果、当初の目論見通り、3次巡回体上のHilbert保型形式の具体的な構成の目処が立った。 次に、(ii)については、後藤有輝氏 (慶應義塾大・理研)、関川隆太郎氏、根本裕介氏 (千葉大) との共同研究を通じて、Klein型超曲面のコホモロジー群について知見を深めた。しかし、当初の目標であるKlein曲面のPicard群に限定しても、未だ満足のいくところまで理解が進んでいないため、次年度も共同研究を継続予定である。進捗が芳しくなかった原因として、各者が多忙なため遠隔での打ち合わせが中心だったことと、研究代表者が年度後半に十分なエフォートを避けなかったことが挙げられるので、次年度は長期休暇中に対面での打ち合わせの計画を立てたいと考えている。 (i)(ii)の他には、捻られたNagell-Ljunggren曲線上の整数点に関する成果を学術論文として発表したこと、及び楕円曲線の絶対ゼータ関数に関する成果をプレプリント(冨田拓希氏(慶應義塾大)との共著)として公開したこと、などが主な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までとは異なり、今年度は学生アルバイトを雇用できたため、年度単位で見れば想定通りに研究課題を進めることができた。しかし、次年度に研究代表者が山口大学に異動することもあり、年度はじめに想定していなかった雑務等が年度後半に生じてしまった。そのため、一部の研究課題については、年度後半に研究代表者が十分なエフォートを割くことができず、昨年度までの遅れを取り戻すには至らなかった。以上を総合して、当初の計画に比べると「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)は、今年度に引き続き、 (i) 3次巡回体上のHilbert保型形式の具体的な構成、及び (ii) Klein曲面のPicard群の構造解明、の2つを中心に研究を進めることに加えて、(iii) 昨年度までに得た成果を学術論文として発表したいと考えている。 まず、(i) については、今年度末の段階で既に、3次巡回体上のHilbert保型形式の具体的な構成の目処が立っている。そのため、引き続き、比嘉氏、関川氏との打ち合わせを通じて、研究成果の整理、論文執筆、投稿を進める予定である。現在のところ、毎月1回程度、東京理科大学(千葉県野田市)に出張し、対面で打ち合わせを行う予定である。 次に、(ii)については、今年度の進捗が芳しくなかった原因として、各者が多忙なため遠隔での打ち合わせが中心だったことと、研究代表者が年度後半に十分なエフォートを避けなかったことが挙げられる。そのため、次年度は、定期的に行っている遠隔での打ち合わせだけでなく、長期休暇中に対面での打ち合わせの計画を立てたいと考えている。 最後に、(iii)について、「研究実績の概要」で触れられなかった成果もいくつかあるので、それらを学術論文として整理し、公開、出版したいと考えている。これらについては、関連分野が多岐に渡ることもあり、文献調査・整理に忙殺される恐れがあるため、大学院生をRAとして雇用することで文献調査・整理の補助をしてもらいたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、研究補助を任せる学生アルバイト・RAを雇用する予定であった。しかし、2021年度・2022年度は適当な人材を見つけられなかったため、 その分、当該年度の進捗が遅れてしまった。一方、2023年度は、学生アルバイトを1名雇用できた結果、概ね計画通りに研究を進められた。そのため、2024年度は、学生アルバイト・RAを複数名雇用することで、これまでの遅れを取り戻したいと考えている。また、研究代表者が東京理科大学から山口大学に異動した結果、関東在住の共同研究者との研究打ち合わせに際して、当初の想定を大きく上回る旅費が必要になった。しかし、コロナ禍で一時的に研究出張が制限されたことがある意味で幸いし、当初旅費に充てる予定で未使用だった研究費を2024年度分の旅費として有効に利用したいと考えている。以上に加えて、当初の予定通り書籍も購入予定であるため、 前年度未使用額を次年度使用額に繰り越したいと考えている。
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