2021 Fiscal Year Research-status Report
エントロピースペクトルの剛性問題とRuelleゼータ関数の表示
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21K13809
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中川 勝國 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (00855455)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 力学系のRuelleゼータ関数 / Gibbs測度 / エントロピースペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)片側シフト上のsuper-continuous関数のRuelleゼータ関数を考える。研究代表者は、super-continuous関数の十分大きいクラスに対して、Ruelleゼータ関数の多項式表示の存在を証明した。証明は、トレースクラス作用素の理論と、研究代表者の2019年の結果であるsuper-continuous関数をポテンシャルとする転送作用素の跡公式とを組み合わせて行った。多項式表示の存在を含む結果を、現在論文としてまとめているところである。
(2)片側シフト上のsuper-continuous関数をポテンシャルとするGibbs測度のエントロピースペクトルを考える。「研究開始時の研究の概要」でも述べたように、エントロピースペクトルの位相的圧力を用いた表現から、自然にRuelleゼータ関数の1-パラメータ族が得られる。この1パラメータ族の零温度極限における挙動の解析が剛性問題解決の鍵となる。特に、零温度極限における挙動から、もとの1-パラメータ族が復元できるかが大きな問題である。研究代表者は、ポテンシャルが局所的定数関数の場合に、この復元が可能であるための片側シフトに対する十分条件を与えた。super-continuous関数の研究は、局所的定数関数の場合の結果をたたき台として行われるため、この結果には意義がある。この結果はBulletin of the Brazilian mathematical society誌に掲載された。
(3)(2)に関連して、局所的定数関数をポテンシャルとするGibbs測度間の測度論的同型が位相的同型に拡張できるための十分条件を与えた。この論文は専門誌に投稿するとともに、arxivでプレプリントとして公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
片側シフト上のsuper-continuous関数の十分大きなクラスに対して、Ruelleゼータ関数の多項式表示を導出できた。多項式表示の導出は、剛性問題の解決に際して最も重要なステップであり、これが解決されたことで、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
多項式表示の存在を証明できたが、論文の投稿には至らなかったので、この結果を論文として投稿することを最優先とする。並行して、ポテンシャルがsuper-continuous関数である場合に、Gibbs測度のエントロピースペクトルから得られるRuelleゼータ関数の1-パラメータ族の零温度極限での挙動の研究を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナウイルス感染症の流行により、研究打ち合わせや成果発表のために使用する予定であった国内旅費と海外旅費は、すべて使えなくなってしまい、結果として次年度使用額が生じた. 2022年度も新型コロナウイルス感染症の流行は続いているので、研究打ち合わせおよび研究成果発表のために国内旅費と海外旅費をどの程度使用できるかは不透明であるが、 対面形式の研究集会が再開され次第国内外への出張を行う予定である。 また、関係図書や雑誌の購入、論文作成と情報収集のためのコンピュータ周辺機器の整備は引き続き行う。さらに、オンライン形式の研究集会が続く場合には、遠隔発表のための機器整備も行う。
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Research Products
(3 results)