2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13810
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
須崎 清剛 熊本大学, 大学教育統括管理運営機構附属数理科学総合教育センター, 特任助教 (90793349)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 確率解析 / 葉層付き空間 / 各葉拡散過程 / 確率流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、Euclid空間や多様体上の確率解析から、葉層付き空間上の確率解析へと発展させ、とくに葉層付き空間上の確率流の構成とその性質を明らかにすることである。その達成のために今年度取り組んだ研究の概要は以下である。 (i)各成分が葉と呼ばれる多様体である分割が与えられていて、その分割の様子が局所的にはEuclid空間と位相空間の直積と見なせる空間を葉層付き空間という。今年度は、葉層付き空間上で空間パラメータ付きセミマルチンゲールが定める一般化された確率微分方程式を導入し、その解の存在と一意性、およびその解が定める確率流の葉を横断する方向の出発点に関する確率連続性の証明に取り組んだ。基本となるEuclid空間と位相空間の直積上で、空間パラメータ付きセミマルチンゲールが定める一般化された確率微分方程式を導入し、そのセミマルチンゲールの局所特性量に適切な連続性の条件を仮定することで、標準的な場合のほとんどの議論の類似はうまくいくことがわかったが、確率連続性についてはいくつか難点が生じ、残念ながら今年度内に解決には至らなかった。 (ii)一方で、(i)の確率流が得られた場合であっても、一般の葉層付き空間で解を張り合わせる際に困難な箇所が現れる予想がついたため、本研究計画の段階を一部前倒しして、(i)の補完として計画していたラフ微分方程式の解が定めるラフ流の葉層付き空間版の考察も現段階で取り組むべきという結論に至った。 (iii)慶應義塾大学の鈴木新太郎氏と写像トーラス上の各葉Brown運動といくつかの力学系の関連について意見交換を行った。写像トーラス上の各葉Brown運動は、研究代表者が取り扱う葉層付き空間上の各葉拡散過程の最も基本的な例であり、本研究で予定通りの主結果が得られた場合の1つの重要な応用先と考えられる。今後も積極的に意見交換と議論を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
葉層付き空間上の空間パラメータ付きセミマルチンゲールによる一般化された確率微分方程式の解が、葉を横断する方向には確率連続な確率流を定めることの完全解決には至らなかったが、一方でいくつかの問題点を把握できたことや早期にラフ微分方程式とラフ流の葉層付き空間版の考察が必要という判断ができたことは、研究計画全体としては進展している。以上より、やや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
葉層付き空間において、空間パラメータ付きセミマルチンゲールによる一般化された確率微分方程式の解が定める確率流の確率連続性については、セミマルチンゲールの局所特性量に有界性や強い連続性を仮定し、証明を試みる。その後停止時刻やカットオフによる時間と空間の局所化、および時間変更の手法を用いて、一般の場合へと拡張を行う。種々の問題点を把握しつつ、同時進行で葉層付き空間上の一般化された確率微分方程式に対応するラフ微分方程式を導入し、その解の存在と一意性、さらに葉を横断する方向に対する連続性定理の証明に取り掛かる。予定通りの成果が得られた場合は、上記の確率流の確率連続性から確率論的難点が切り離され、さらに局所座標近傍内の解の張り合わせや零集合の取り扱いも容易となり、見通しのよい議論が行えることが期待される。
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Causes of Carryover |
参加をしたほとんどの研究集会がオンライン開催となったため、今年度使用予定だった旅費を新型コロナウイルス流行が落ち着いた後のさらなる情報収集や議論、発表のための出張旅費に回し調整を行う。また、状況に応じてオンラインでの議論および研究集会参加のために用いる機材の購入や必要となる確率論・幾何学分野の書籍の購入に使用する予定である。
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