2021 Fiscal Year Research-status Report
複合媒質における固有値問題と最適コーティング形状の解析
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21K13822
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷地村 敏明 京都大学, 高等研究院, 特定研究員 (30898797)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 楕円型方程式 / 形状最適化問題 / 過剰決定問題 / 自由境界問題 / 固有値問題 / 複合媒質 / 数値計算 / 伝送条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては,コーティング問題に由来する形状最適化問題,特にコーティング問題の臨界形状を表す過剰決定問題について考察し,最適コーティング形状の幾何学的な性質や構造について解析した.具体的には,二相媒質におけるSerrin型優決定問題に関するある種の安定性に関して取り組んだ.特に介在物の係数がコーティング部分に十分近い場合,並びに介在物が境界から十分遠く,かつ体積が十分小さい場合について考察した.これはSerrin型優決定問題において,二相媒質が一相媒質に近い状況であると考えられるため,一相媒質における先行研究の結果からコーティング形状は球面に近づくことが定性的な考察並びに数値計算から予想されていたが,証明できていなかった.本研究では一相Serrin型優決定問題に関する新しい安定性評価を導出し,その結果を二相媒質におけるSerrin型優決定問題に適用することで,二相媒質が一相媒質に近い状況における定量的安定性評価(コーティング形状がどの程度球面に近いか)を導出した.さらにこの安定性に関する結果を応用することで,ある状況において,二相媒質におけるSerrin型優決定問題の内部問題を満たす領域の非存在を証明することができた.この結果は二相媒質におけるSerrin型優決定問題の内部問題を満たす領域の大域存在を考察する際には,介在物の伝導係数または位相に関する制限が必要であることを示唆しており,今後の研究に繋がる興味深い結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は二相媒質におけるSerrin型優決定問題に関するある種の安定性に関して取り組み,介在物の係数がコーティング部分に十分近い場合,並びに介在物が境界から十分遠く,かつ体積が十分小さい場合のコーティング形状がどの程度球面に近いかという定量的評価や,その応用として内部問題を満たす領域のある場合における非存在を証明した.本問題で考察した方程式は二相ねじり問題に関連するものであるが,本研究課題の主眼である二相固有値問題においても同様の主張が成り立つと考えられるため,今後の研究の指針となるものである.さらに上記の研究の延長として,介在物の界面においてある種の不連続性を有する場合のSerrin型優決定問題において,その不連続性がコーティング形状にどのような影響を及ぼすかについても研究が進展している.以上より,進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
薄膜の場合におけるコーティング問題に関しては最近多くの結果が証明されつつあるため,複合媒質におけるコーティング問題を推し進めていく.具体的には,現在研究が進展している不連続界面をもつSerrin型優決定問題に関する解析を行う.また,二相Serrin型優決定問題に関してこれまで証明された結果が二相固有値問題においても成り立つか考察する.
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Causes of Carryover |
Covid-19の感染状況に関わる研究打ち合わせの中止によって執行できなかった予算が生じた.次年度では研究打ち合わせ等に充てる予定である.
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