2021 Fiscal Year Research-status Report
パラメーターを含む非線形分散型方程式の連立系に対する時間大域的可解性について
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21K13825
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
平山 浩之 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (90748328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非線形シュレディンガー方程式 / 初期値問題 / 適切性 / 基底状態 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はレーザーとプラズマの相互作用を記述する非線形シュレディンガー方程式系(以下NLS系)について考えた。この方程式系は線形部分に3つのパラメーターを含み、それらの値によって初期値問題の可解性の構造に違いが生じる。既に先行研究によって、パラメーターの値と時間局所的な可解性との関係については多くの結果が得られている。一方で、時間大域的な結果についてはそこまで得られていない。そこで、本研究では次の問題について取り組んだ。(池田正弘氏との共同研究) (1) どのような初期値に対して時間大域的適切性を得ることが出来るか? (2) 定在波解は存在するか?またその安定性は得られるか? これらの問題を考えるにあたり、NLS系の持つ保存量に着目した。特に、NLS系はエネルギーを保存量として持つが、それは線形部分から定まるエネルギー(運動エネルギー)と非線形部分から定まるエネルギー(位置エネルギー)の和になっている。なお、NLS系は単独のシュレディンガー方程式とは異なり、運動エネルギーが必ずしも定符号を取らない。そこで当該年度は、パラメーターの条件として運動エネルギーが定符号を取る場合のみ考えた。 本研究では作用と呼ばれる保存量に対する変分法的手法を用いることで、上記の問題(1)、(2)について次のような結果が得られた。まず(1)については、後述の基底状態解よりも作用の小さい初期値を考えた。初期値の位置エネルギーが運動エネルギーと同符号となるか、もしくは絶対値が小さい場合にNLS系の時間大域的適切性が得られることが明らかとなった。(2)については、定在波が満たすべき定常問題に対して作用が最小となる解(基底状態解)の存在を示した。しかし、NLS系の定常問題の複雑さから基底状態解を具体的に書けないといった難しさが生じ、安定性についてはまだ分かっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形シュレディンガー方程式系に対し、時間大域的適切性が得られる初期値の特徴を捉えることが出来た。また、定在波解の安定性は分かっていないものの、その足がかりとして基底状態解の存在を示すことが出来た。そのため、先行研究ではあまり得られていなかった解の時間大域的な挙動について前進が見られた。以上の理由から、状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では基底状態解の性質を調べることで、定在波解の安定性についての結果を得ることを試みる。また、初期値の位置エネルギーが運動エネルギーと異符号でかつ絶対値が大きい場合について、解の時間大域的な挙動を明らかにする。この場合には非線形の効果が線形の効果より大きくなると考えられるため、解の有限時間爆発が起こるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
当該年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定していた出張および研究集会の対面開催が困難となった。そのため、出張や招聘の旅費の支出が無くなり、次年度使用額が生じることとなった。次年度は研究遂行の際に必要となる書籍の購入、研究打ち合わせや研究集会参加に伴う出張旅費、および研究集会開催に伴う招聘旅費に予算を充てる予定である。ただし旅費については、研究集会等の対面開催が困難な場合にはオンラインでの開催が主体となるため、Web会議に用いるための物品費に予算を充てる。
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