2021 Fiscal Year Research-status Report
確率的な制御誤差が量子アニーリングの性能に与える影響の評価
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21K13848
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥山 真佳 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (60844321)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子アニーリング / 断熱定理 / 確率微分方程式 / 動的量子相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子アニーリングは孤立量子系の時間発展を計算に利用する量子計算方式の一種である。孤立量子系の時間発展は理想的にはシュレディンガー方程式によって記述されるが、現実の実験系では外界の影響を完全に排除することは難しい。外界が孤立量子系に与える影響として、これまでの先行研究では熱浴との相互作用や決定論的に生じるハミ ルトニアンの制御誤差のみが議論されてきた。しかしながら、ハミルトニアンの制御誤差には、決定論的に生じる誤差だけでなく、確率的に生じる誤差も存在する。そこで、本研究課題ではハミルトニアンに確率的に生じる制御誤差をシュレディンガー方程式における確率ノイズとして定式化することにより、確率微分方程式の解析を通じて、確率的な制御誤差が量子アニーリングの効率にどのような影響を及ぼすかを解明する。 本年度は二つの方針で研究課題に取り組んだ。一つ目の方針は確率微分方程式において断熱定理を確立することである。断熱定理は断熱量子計算の性能評価の基礎となるものであり、ゆっくりと状態を時間発展させれば系の状態が常に基底状態そって変化することを意味する。断熱定理は量子アニーリングの性能評価においてもしばしば用いられるものであり、確率的な制御誤差が存在する場合に断熱定理を拡張することは本研究課題の目的のために非常に重要である。先行研究では確率ノイズが決定的な項と可換な場合に断熱定理の対応物が得られている。先行研究の結果を非可換な場合に拡張するべく取り組んでいるが、残念ながら満足のいく結果は得られていない。 二つ目の方針は量子多体系の時間発展に確率的な制御誤差が与える影響を調べることである。特に、本年度は確率的な制御誤差が動的量子相転移に与える影響について詳しく解析を行った。解析計算の結果、申請者の問題設定の範囲では確率的な制御誤差が動的量子相転移の性質に大きな影響を与えないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目標である確率微分方程式における断熱定理の拡張に関してはうまくいっていない。一方で、第二の目標である確率的な制御誤差が量子多体系のダイナミクスに与える影響に関しては満足のいく結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き確率微分方程式に対する断熱定理の拡張に取り組んでいく。これが完了次第、断熱定理に基づいて確率的な制御誤差がGrover問題に与える影響について議論していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、国内、海外出張が困難であること、また論文投稿が予定より遅れており、論文掲載費として予算を使用しなかったため、大幅な次年度使用額が生じた。 使用計画として、現在査読中の論文の論文掲載費として主に使用する。
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