2022 Fiscal Year Research-status Report
2次元テンソルネットワーク手法を用いた量子多体系の実時間ダイナミクスの研究
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21K13855
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
金子 隆威 近畿大学, 理工学部, 博士研究員 (10881211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | テンソルネットワーク / 量子多体系 / 非平衡系 / 冷却原子系 / 量子シミュレータ / Rydberg原子 / 量子スピン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は光格子中の冷却原子気体や光ピンセットで配列されたRydberg原子集団で実現される孤立系に注目し、その時間発展をテンソルネットワーク法および様々な解析手法により計算した。主要な成果を抜粋して以下に挙げる。 (1) Rydberg原子集団のアナログ量子シミュレータの実験に動機づけられて、1次元および2次元横磁場Ising模型における無秩序相からのクエンチダイナミクスを計算した。まずは、1次元系で線形スピン波近似で縦および横スピン相関関数を計算し、この近似が厳密な群速度を再現するものの定量的な相関関数の記述には失敗することを確認した。次に、線形スピン波近の精度が上がる2次元系で同様に群速度を見積もった。2次元テンソルネットワーク法でもこれと整合する群速度が得られることを確認し、スピン波近似よりも正確な縦および横スピン相関関数の計算に成功した。この結果は今後の実験の良いベンチマークとなると期待され、関連する成果を論文として投稿した。 (2) 初年度行ったBose-Hubbard模型におけるクエンチダイナミクスのテンソルネットワーク法による計算結果と、Bose-Hubbard模型でクエンチ後のRenyiエンタングルメントが実験観測できることに動機づけられて、積状態を初期状態にして相互作用がない任意空間次元の模型で時間発展した場合の各時刻でのエンタングルメントの解析的な表式を求めた。先行研究の2倍程度の大きな系でもエンタングルメントを計算できることを数値的に示した。また、エンタングルメントが体積則を満たす条件を解析的に求めた。さらに、通常であれば計算にシステムサイズの指数時間かかるエンタングルメントを多項式時間で近似的に求める式も提唱した。この成果はPhysical Review A誌に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究(1)では、統計物理学の基本的な模型であり、近年アナログ量子シミュレータでも実現できる横磁場Ising模型において、2次元テンソルネットワーク法とスピン波近似の適用可能性を検証できた。我々の結果は今後の実験に役立つだけでなく、最も基礎的なスピン模型において、空間次元が2次元以上の系で(局所的に相互作用する量子多体系における情報伝播速度の上限である)Lieb-Robinson限界がどう振る舞うかについての指針も与える。 研究(2)では、相互作用のないBoson系のエンタングルメントダイナミクスに関する厳密な表式を任意の空間次元で初めて明らかにした。この結果は、孤立量子系に限らず、開放量子系への応用も期待できる。また、(相互作用のある系にも適用できるような)テンソルネットワーク法も含めた種々の数値計算手法の良いベンチマークにもなる。 以上のように、本研究課題が概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、さらに複雑な孤立量子系における相関伝搬ダイナミクスをテンソルネットワーク法および関連する手法を組み合わせることで明らかにする。また、これまでの孤立量子系の研究で得られた知見を元に、開放量子系に特有な非平衡現象をテンソルネットワーク法を利用しながら探索する。
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