2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a pulsed laser with rapid frequency shift in ultraviolet region for realizing laser cooling of positronium
Project/Area Number |
21K13862
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
周 健治 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70881233)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冷却原子 / レーザー冷却 / 電気光学変調器 / ポジトロニウム / レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
ポジトロニウムのレーザー冷却を実現するために、周波数の高速シフト性能を有するサブマイクロ秒の持続時間をもつパルス紫外レーザーの開発を進めた。特に、周波数の高速シフトを実現する肝となる、電気光学変調器(EOM)の駆動試験を行い、プロトタイプ機と比較して、3倍高い周波数である 236 MHz にて3倍程度深い変調を実現できることを確認した。このような深い変調は、定常的に EOM を駆動する通常の方法では熱的負荷のためにかなわないが、本研究ではレーザーのパルス発振が生じる短時間に駆動を制限することにより制限を回避できた。数値計算に基づいた計算を行い、この EOM を光源に組み込むと、従来の構成より10倍速い周波数シフトが得られると見積もられる。この性能は、ポジトロニウムのレーザー冷却に最適な周波数シフトを実現できるものであり、冷却されるポジトロニウムの数を大幅に増やすことにつながる。これにより、ポジトロニウムのレーザー冷却の実証や、ポジトロニウム遷移周波数の精密測定を通した基礎物理学研究検証に資することが期待される。 EOM の駆動のために、まず、パルス駆動可能な 236 MHz 発振器を構築し、高周波増幅器により、最大パワー 50 W へと増幅した後、EOM へ印加した。試験では、40マイクロ秒間持続する高周波のパルスを 10 Hz 繰り返しで EOM へ印加したとき、EOM へレーザーを入射して出てくる出射光の光スペクトルを解析し、変調された光の次数、強度と、印加高周波パワーとの関係を得ることで、設計通りの変調深さが実現できているか確認した。光スペクトルの解析は、ファブリペロー干渉計の長さを掃引しながら透過光パワーを計測することで行った。試験の結果、EOM の破損なく 50 W の高周波を印加でき、想定された変調深さである 9 rad を実現できたことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体の鍵となる、電気光学変調器(EOM)の駆動方法の最適化により、所望の変調周波数、深さを実現できたため。本研究で用いたような、ハイパワーの高周波により EOM をパルス駆動することは、本研究で用いる EOM の製造元にとっても実績がなく、試験により実現可能なことが明らかとなったのは、大きな進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
駆動試験を行った電気光学変調器(EOM)をレーザーに導入後、最適な EOM 駆動変調深さの探索を通して高速周波数シフトを実証し、ポジトロニウム冷却に最適な光源を完成する。特に課題となるのは、EOM によって広帯域化した光周波数と、レーザー共振器の共振縦モードが、レーザー共振器内の分散性媒質の影響によりずれることの影響により、レーザー発振が妨げられる可能性への対処である。本研究では、共振器内の分散補償、もしくは、EOM 駆動変調深さを、レーザー励起の前後で時間変化することで、分散の効果を抑えた上で、高速な周波数シフトを実現することを計画している。後者の方策では、新たな素子等をレーザーに導入しないため、レーザー共振器のQ値を下げずに済むという利点があり、検討や実証を進める。 また、高速周波数シフトの観測方法を改善し、より直接的に実証することを計画している。従来、パルスレーザーを一部、時間領域において選択的に増幅し、切り出した光の周波数スペクトルを観測するという方法を用いていた。本研究においてもこの手法を用いることができると考えられるが、増幅の非線形性や、シングルショットでの解析が不可能なことから、計測の方法を改善し、信頼性を向上することが望まれる。本研究では、ストリークカメラを用いた時間分解分光測定を行うことで、上述の課題を克服したレーザースペクトルの時間発展計測を行い、より確実な光源の性能評価を実現する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Experimental progress in physics of cold positronium2021
Author(s)
Kenji Shu, Y. Tajima, T. Kobayashi, R. Uozumi, E. Chae, K. Yoshioka, A. Ishida, T. Namba, S. Asai, M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima, B.E. O’Rourke, K. Michishio, K. Ito, K. Kumagai, R. Suzuki, S. Fujino, T. Hyodo, I. Mochizuki, K. Wada and T. Kai
Organizer
Fundamental Physics Using Atoms 2021
Int'l Joint Research
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