2021 Fiscal Year Research-status Report
ディラック電子系における逆ファラデー効果によるスピン流発生
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21K13863
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河口 真志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90792325)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピントロニクス / ディラック半金属 / 逆ファラデー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではBiで観測された円偏光起電力について、円偏光によって電子スピンが影響を受ける逆ファラデー効果に着目し、その起源を解明することを目的に研究を行った。まず、これまでも観測されてきたBiについて強磁場を印加しながら円偏光起電流を観測できる測定系を構築し、磁場、温度依存性について調査を行った。結果としては円偏光起電力の磁場依存性には7Tまでの領域については大きな変化が見られなかった。この結果を、逆ファラデー効果と逆スピンホール効果による電流生成のメカニズムを念頭に解釈した場合には、Biのスピン緩和時間が相当に短いということであり、スピン散乱機構がある程度限定される。一方で温度依存性からは低温で起電力が抑制される傾向が見出された。これに関しては逆スピンホール効果と逆ファラデー効果の温度依存性が、それぞれ、あるいは一方で現れている可能性があり、現在も調査中である。また、Biに対して不純物を添加することで電子構造に小さい変化を加える実験を、薄膜製造方法を変えて行った。この結果からは以前の別の製法によるBiの結果と同様に純粋Biのフェルミ面近傍において特異的に大きな効果が表れていることが示唆されており、試料製造方法に依らないより物質の内的な効果であることが支持されている。ただし、不純物の添加量が大きい領域については試料製法によってやや異なる振る舞いが見られるため、構造解析等も行いつつ慎重に調査を進めている。また、これとは別にディラック電子系の代表的物質であるグラフェンにBiを添加することで円偏光起電力とディラック電子系の関係を調べる実験も行い始めている。こちらについては今のところ大きな効果は観測されていないが、グラフェンの電子散乱の少なさが影響している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
磁場依存性、温度依存性については当初の計画通りに調査を行うことができた。結果としては両方から円偏光起電力の生成機構に関してある程度示唆が与えられる情報が得られた。Biの不純物添加による起電力への影響についても試料作製方法を変えて調査した結果、本質的にディラック点近傍における電子と光の相互作用が重要である結果が得られた。また、他のディラック電子系を持つ物質に対する調査としてはグラフェンについてBiを添加することでスピン軌道相互作用の面から調査を行ったが、今のところ顕著な結果は見られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
Biの円偏光起電力については引き続きスピンホール効果の温度依存性等の面でも調査を行う。一方で不純物添加の実験については試料作製方法の違いによって変化する部分と変化しない部分があることが明らかになり始めているため、構造解析等を行ってより本質的な部分に焦点を当てるべく慎重に進める。また、他のディラック電子系として用いたグラフェンについては、低抵抗であることが観測を難しくしている可能性があるため、測定系や製法を工夫することを計画している。
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Causes of Carryover |
試料製造について大型の装置を導入しようと計画したものの、昨今の状況によって納期遅れなどが生じたため、該当年度中における予算執行が困難になった。そのため、次年度に合わせて装置等の導入に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)