2022 Fiscal Year Research-status Report
横型量子ドットのゼロ磁場領域における少数スピン物理の研究
Project/Area Number |
21K13867
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 高史 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00809642)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 量子ドット / 単一電子スピン / 非ドープ型量子井戸 / GaAs |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、低磁場下でのスピン物理に関する探究を目的として、スピン状態に対して電気的揺らぎに耐性をもつ状態の発現を期待しています。この目的を達成するために、光学系、ホールスピン、新しいスピン操作技術などの基礎技術の研究開発を進めています。当該年度では、光学系の構築、連続照射実験、スピン制御系の動作確認、電子-ホール量子ドットの4つの要素技術の開発に注力しました。 光学系に関しては、単一モード光ファイバーを冷凍機に導入し、照射実験を可能にしたことで、より集光効率の良い測定系を構築することが可能になりました。関連して、非ドープ型のGaAs量子井戸基板を基にした量子ドットへの連続照射実験では、連続照射中の電荷検出に成功したことが挙げられます。さらに、スピン制御の発展に関しては、断熱スピン反転操作という安定したスピン操作法に対して、より操作時間が短い提案について原理検証実験を行い、相互作用が弱い中でも桁違いに高速にスピン反転操作が可能であることを実証し、成果を上げています。また、ホールスピン系に関しては、二次元系での再結合実験に成功し、ホールスピンの密度を制御することに成功し、発表準備を進めていることが挙げられます。今後の量子ドット実験に向けた数値シミュレーションも実施され、研究成果がさらに発展する基盤を構築しています。 それぞれの成果は、光による安定したスピン励起や、その後のスピン操作へと発展の余地があり、適切に要素技術を組み合わせることが重要です。半導体中のスピンに関する基礎物性の研究に寄与する基礎技術に応用する中で、本研究の目的の達成につながると期待しています。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記4つの要素それぞれについて、順調に進んでいる。そのうちの一つであるスピン制御に関する部分は、予定よりも早く進行したことに加え、より高速化が見込める新しい成果が得られている。一方、4つの要素から取捨選択し、統合していく部分には課題があり、全体の進捗度合いは完全ではないが、おおむね順調であると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、現在各要素技術の発展を進める段階にあり、その中で統合を試みることが課題である。これまで、異なるデバイスの特性を利用し、測定される極低温設備も異なっていたため、単純に組み合わせることには課題が残っている。そのため、有望なデバイスに対して、要素技術の統合を果たす測定環境に注力することを計画している。これらの開発が成功すれば、デバイスや手法の異なる新しい組み合わせによる手法が確立され、研究の応用が広がり、低磁場スピンを観測することが期待できる。
|