2023 Fiscal Year Research-status Report
非クラマース二重項系における軌道ゆらぎ超伝導の発現条件の検証
Project/Area Number |
21K13869
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
脇舎 和平 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50781465)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非クラマース二重項 / 多極子 / 構造相転移 / カゴ状物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の研究対象であるPrT2A2Zn18 (T:遷移金属, A = Sn, In)は、PrT2Zn20において3つ存在するZnサイトのうち、16cサイトのZnを選択的に別の元素で置き換えることで得られる。本年度は新たな非クラマース二重項基底状態をもつ化合物を探索するために、PrRu2Zn20とPrOs2Zn20に対して、16cサイトのZnをCdに置換することを試みた。フラックス法により合成した試料について粉末X線構造解析を行ったところ、Cdが16cサイトへ優先的に置換される傾向があることがわかった。磁化測定では、磁化の温度依存性が低温で小さくなるVan-Vleck常磁性的な振る舞いが観測された。このことは、Cd置換系の結晶場基底状態が、非磁性の非クラマース二重項である可能性があることを示す。また、昨年度合成を行なったPrOs2Sn2Zn18について、室温から4 Kまでの電気抵抗測定を行なった。Snを置換していないPrOs2Zn20では、構造相転移による異常が観測されているが、PrOs2Sn2Zn18ではその異常が観測されなかった。このことは、Sn置換により構造相転移が抑制されていることを示唆する。また、PrOs2Sn2Zn18では30 K付近でブロードな肩構造が見られた。この電気抵抗の温度依存性は、2 Kで多極子秩序を示す非クラマース二重項系PrRu2Sn2Zn18のものとよく似ている。これまでのところ、PrOs2Sn2Zn18について行なった4 Kまでの磁化・比熱・電気抵抗測定では、相転移などによる異常は観測されていないが、PrRu2Sn2Zn18との類似性からPrOs2Sn2Zn18においても4 K以下の温度領域で非クラマース二重項がもつ多極子自由度に起因した物性の発現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始年度から研究代表者の所属機関が変更となり研究環境の構築に時間を要したことや、コロナ感染症の影響もあり、研究計画からの遅れを生じていた。本年度までの研究により、予定していた化合物の合成はほぼ完了したが、得られた試料に対する物性測定については予定通りに行えていない部分が残っている。そのため、現在までの進捗状況をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況でも述べたように、特に本研究課題で合成した試料に対する物性測定については研究計画からの遅れを生じている。そこで1年間研究期間を延長し、研究計画の遂行を目指す。
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Causes of Carryover |
研究開始年度から研究代表者の所属機関が変更となったことや、コロナ感染症の影響により研究の進捗に遅れが生じた。これらの理由から、1年間補助事業期間を延長することになったため次年度使用額が生じた。
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