2023 Fiscal Year Research-status Report
Quantum transport phenomena induced by topological spin textures
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21K13875
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仲澤 一輝 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (70884964)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | カイラリティー / 異常ホール効果 / 非線形輸送現象 / 第一原理計算 / トポロジカル半金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は所属が変わり、新しい研究テーマも交えながら、引き続き物質中の輸送特性の研究を推進した。 まず、半導体ナノ構造中において、多種のスピン軌道相互作用と外部磁場のもとでの直流電場の2次に対する応答を、バンド間効果も含めた微視的な枠組みの下で調べた。従来のボルツマン輸送理論による解析と比較し、半導体ナノ構造における非線形輸送現象に対するバンド間効果の重要性を指摘した。また、スピン軌道相互作用の種類によって磁場依存性が大きく異なることを示し、非線形輸送現象を用いたスピン軌道相互作用の大きさや種類の検出可能性を議論した。この成果は現在論文準備中で次(2024)年度の出版を目指している。 並行して、前年度に定式化された電場と温度勾配の外積に比例する電流応答である「非線形カイラル熱電(NCTE)ホール効果」の、第一原理計算を用いた定量解析に取り組んだ。具体的には、カイラルな結晶構造をもつTeやB20型化合物CoSiといった物質において、実験でも観測可能な電流値を得た。また、この現象における軌道磁気モーメントの重要性を指摘した。また、NCTEホール効果と電場の2次の電流応答の輸送特性としての違いを、対称性による観点も含めて調べた。この成果はTeに関してはプレプリントサーバーarXivにアップロードして公開し、CoSiについても現在準備中である。 さらに、本年度はB20型化合物FeGeにおける圧力下物性の実験を受けて第一原理計算を行い、実験結果と整合する結果を得たほか、spin-1励起というバンド構造に存在する特異点のエネルギー位置を圧力でコントロールできる可能性を指摘した。この論文もarXivにアップロードされ公開されている。 他、前年度から引き続き行っている研究成果も数件arXivにて公開した。これら未出版もしくは準備中の成果はいずれも次(2024)年度の出版を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標の一つである非線形領域の輸送現象(電場の2次以上に対する応答)を調べることについてはプロトコルが形成されつつある。微視的定式化に基づいて数値計算を行うことができ、具体的な物質に興味がある場合には第一原理計算によって定量的な解析ができるようになり、実際に(未出版だが)プレプリントとして公表した段階である。従って、次年度以降の展性も充分期待されるため、本研究は概ね淀みなく進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形輸送現象が微視的に定式化されていることから、これまで線形応答領域でしか調べられてこなかった現象(アンダーソン局在、近藤効果etc.)を非線形領域に拡張し、かつ量子効果(バンド間効果、不純物散乱など)を含めて調べることができる。さらに、こういった現象をメゾスコピックな系において調べることも考えている。最近ランダウアービュティカー法のような現象を非線形領域に拡張した研究もおこなわれており、このようなフォーマリズムを適用して系統的な調査を行うことも考えられる。 電場と温度勾配の両方に起因する非線形輸送現象に関しては、これまではそれらの外積に比例する寄与(反対称成分)に着目してきたが、対称成分に関する考察も現在進んでおり、反対称成分には存在しないバンド非対称性による寄与が存在することを具体的に示している。これを受けて、これまでに我々が調べたTeやB20型化合物をはじめ、2次元物質にも適用してその振る舞いを調べることも考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度は所属の変更などもあり、研究成果を出すことにエフォートを割いたため、あまり支出がなかった。また、次年度(2024年度)には少し長めの海外出張(学会2件と議論のため)を予定しており、それに係る費用に回すためにも少し使用を控えた。
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