2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the origin of the chiral magnetic structure and control of the number of "twists" in chiral f-electron magnets
Project/Area Number |
21K13879
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 翔太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40824892)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キラル磁性 / 反対称スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
キラル金属磁性体Yb(Ni,Cu)_3_Al_9_では、らせん軸に垂直方向に磁場を印加したとき、一軸らせん磁気構造で“ひねり”(ソリトン)が周期的に配列したキラルソリトン格子が発現する。この物質の磁性は4f電子が担うため、スピン-軌道結合により伝導電子と局在電子の相関が期待される。本研究では“ひねり”と電気伝導の関係性を調べることで、最終的に電流による“ひねり”の駆動現象の観測を目指して、交流磁気抵抗測定を行っている。 この物質のらせん軸に垂直に印加する磁場を増加させていくと、“ひねり”の数は減少していき、最終的には強制強磁性状態になる。この特徴を利用することで様々な周期をもつらせん状態を作り出すことに成功している。“ひねり”の数をより精密に制御するために我々は磁場角度回転磁気抵抗測定を行った。この測定かららせん軸に平行方向近傍では、この“ひねり”の数の減少が著しく抑制されることがわかった。この磁場方向における測定によって、“ひねり”の1つからの情報を得ることが期待される。これまでに、この物質においてバルク試料ではひねり”の1つからの情報を得るが出来ていないが、今後微細加工をした試料において電流密度の高い状態での測定を行いその観測を目指す。 Yb(Ni,Cu)_3_Al_9_と同じ結晶構造をもつGdNi_3_Al_9_において、放射光円偏光X線実験を行い、反強磁性らせん磁気秩序状態を発見した。このらせん周期は温度によって変化することがわかった。 Yb(Ni,Cu)_3_Al_9_は強磁性らせん磁気秩序を示すので、今後反強磁性と強磁性を比較した研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルク単結晶において交流磁気抵抗の高調波応答を捉えることでキラル電気磁気交差相関を介して右巻き左巻きの区別をつけるのには至っていない。この理由に電流密度の不足が挙げられる。この対応のための試料の微細化への道筋は立っている。また、GdNi3Ga9で反強磁性らせん磁気構造の発現が確認され、研究の広がりにも期待が持てる。
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Strategy for Future Research Activity |
キラル金属磁性体YbNi_3_Al_9_においては、必ず電気磁気交差相関があるがその大きさは物質ごとに異なる。本研究では1ミリメートルオーダーのバルク試料を用いて交流磁気抵抗およびその高調波の測定を行っているが、電流密度が低いことによる感度不足なのか、結晶の左右性を反映した信号は捉えられていない。そこで、電流密度を上げるために集束イオンビーム(FIB)によって加工した微細試料を測定に用いることで測定感度を上げたい。 本研究ではすでに交流磁気抵抗をはじめとして磁化やホール抵抗などの基礎データを得ており、臨界磁場近傍かつ、らせん軸に平行方向近傍の磁場下で“ひねり”の数の少ない状態を作りだすことに成功している。この状態を利用して、ひねり”の1つからの情報を得るとともに、共鳴現象による“ひねり”(ソリトン)の滑走を試みる。また、新たに1軸反強磁性らせん磁気構造が発現することがわかったキラル金属磁性体GdNi_3_Al_9_についても、今回構築した測定環境を用いて同様の測定を行い、その有用性の評価を行う。
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