2021 Fiscal Year Research-status Report
Formulation of multipoles and exploration of multipole phenomena
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21K13880
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大同 暁人 京都大学, 理学研究科, 助教 (80884626)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超伝導 / 量子幾何 / 多極子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は量子力学的な多極子の定式化や評価,および量子力学的多極子に関連した物理現象の探索を目的としている.初年度である本年度は,特にブロッホ電子の多極子的性質がクーパー対に転写されることで生じる超伝導現象の探索に取り組んだ. ブロッホ電子の多極子的性質は,より広い言葉で量子幾何と呼ばれるものを指している.例えば,ブロッホ電子波束の電気四極子に当たる量子計量と呼ばれる量は,同時に波数空間での距離を測る計量という幾何学的な意味を持っている.本年度はこの量子計量が単層FeSeの超流動密度において大きな寄与をし,それによって二次元超伝導転移の転移温度が大きく増強されることを共同研究により明らかにした.これは量子幾何的性質が超伝導体の熱力学的性質に直接の影響を与える珍しい例であり,大変興味深いものである. また,量子計量やさまざまな量子幾何的量が引き起こす超伝導非相反応答・非線形応答の定式化を共同研究により行った.絶縁体・金属におけるこれらの応答は近年盛んに研究されており,さまざまな応答が見つかってきたが,今回それらの応答の多くが超伝導状態にも存在することを理論的に示し,さらには超伝導体特有の異常な応答が存在することも明らかにした.そのうちの一つである非相反なマイスナー応答について,近年注目を集めているスピン三重項超伝導体候補物質UTe2を念頭においた解析を引き続き共同研究により行った.当該物質の超伝導対称性はまだ決定されていないが,非相反マイスナー応答がその同定に役立つプローブであることを指摘した.さらに,超伝導体の電磁応答を調べた上記研究と関連して,超伝導体の非相反な臨界電流についての研究も行った.これは消費電力の少ないダイオードデバイスへの応用も期待され,基礎物理学的にも大変興味深い応答である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブロッホ電子の多極子的性質,あるいは量子幾何が引き起こす超伝導現象の具体例を具体的に同定し,超流動密度については物質に即した研究も行うことができた.非相反応答・非線形応答の研究で得られた定式化で,これらについても今後の物質に即した研究などの発展が予想される.
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Strategy for Future Research Activity |
超伝導状態の幾何的性質についての研究を引き続き主として行う.熱力学的応答,輸送応答(相関関数)において正常相の量子幾何的性質がどのようにCooper対が転写されるか,という観点からの定式化を進めており,この内容をまとめることを主な目標とする.既に行った非相反応答や非線形応答の定式化と併せて包括的な理解を目指す.量子力学的多極子の定式化・評価の観点からの研究についても並行して進める.
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Research Products
(10 results)