2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Coarse-Grained Molecular Model for Predicting Dynamics of Entangled Associating Polymers
Project/Area Number |
21K13893
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 健 京都大学, 化学研究所, 助教 (70883536)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 高分子 / 絡み合い / 分岐構造 / 粗視化モデル / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,当該年度も絡み合い状態にある会合性高分子のダイナミクスを予測するメソスケールの粗視化モデルの基礎となる研究を進めた.本研究で検討した粗視化モデルは,絡み合いによる動的束縛をあらかじめモデル化しており,分子量が大きく,絡み合い数が多い高分子の長時間ダイナミクスの予測に特化している. 前年度の研究で,この粗視化モデルが,分岐構造を持つ星型高分子系における緩和挙動に対して,先行研究における実験データと比較して遅い緩和を示すことを明らかにしており,この点に関するさらなる検討を行った.ここでは,星型高分子の分岐点の運動を許すことでこれまでの粗視化モデルを発展させ,分岐点の運動が緩和挙動に与える影響を調べた.結果として,分岐点の運動を許すことで,モデルの示す緩和挙動は実験データに近付くものの,実験データを完全に記述するには至らないことが分かった. 星型高分子のダイナミクスのさらなる検証のために,粗視化モデルおよび分子動力学(MD)法によって動的な量を計算し,それらの比較を行った.その結果,分岐点の運動を許した粗視化モデルは,MD法による拡散挙動と定量的に一致することが分かった. 研究期間を通じて,会合性高分子系や紐状ミセル系など,高分子らしい運動様式に加えて会合・解離などを持つ系を対象とし,粗視化モデルを構築するための基礎的な検討を行った.特に,紐状ミセル系については,その非線形レオロジー挙動を定性的に再現する粗視化モデルを提示することができた.また,レオロジー測定について,サンプル量の制限から,当初計画した絡み合い会合性高分子系ではなく,紐状ミセル系における測定を検討した.いくつかの異なる長さの紐状ミセル系に対するせん断レオロジー測定を行い,高せん断速度領域での粘度の振る舞いに類似性が確認された.この結果は,粗視化モデルのさらなる発展のための手掛かりとなると考えている.
|