2021 Fiscal Year Research-status Report
外部電流系を変量とした最適化によるヘリカル閉じ込め方式の新領域開拓と課題解決
Project/Area Number |
21K13904
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
山口 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (90797101)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核融合 / 最適化 / 遺伝的アルゴリズム / ダイバータ配位 / 準対称配位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,外部コイル形状および電流値を変量とした環状プラズマ閉じ込め磁場配位の最適化が可能なコードとして開発を進めているOPTHECSコードを用いて,主に連続ヘリカルコイルを用いた先進的閉じ込め配位の構築を進めた.OPTHECSの開発実行環境として最大112スレッドの並列計算が可能なワークステーションを導入し計算環境を構築した.非線形計画法として実装しているLevenberg-Marquardt法と遺伝的アルゴリズムをそれぞれ用いて,大型ヘリカル装置(LHD)のコイル配位を対象にコイル電流を変量とした新古典拡散係数を最小化する最適化を行い,ほぼ同じ最適解に適切に収束することを確認した.次に,固定された磁気面形状をターゲットとして外部コイル形状と電流値を逆算し,誤差磁場の最小化等を考慮して最適化するために開発した新しいスキームの有効性を示した.コイル形状を3次B-spline自由曲線で表現し,遺伝的アルゴリズムを組み合わせるコイル形状と電流値を最適化する本スキームにより,準軸対称配位であるCFQSおよび新古典輸送最適化装置であるWendelstein 7-Xの磁気面および回転変換を再現する離散モジュラーコイルが得られることを示した.また,従来は離散モジュラーコイルによって実現されるこれらの磁場配位に対して,3本という比較的小数本のヘリカルコイルと垂直磁場コイルの組み合わせによっても,これらの磁場配位を再現できること,さらに,ヘリカルコイルを用いた場合,ターゲット磁気面の外側にダイバータレグ構造が作られることを明らかにした.同スキームに基づくGOSPELコードをOPTHECSに組み込むことで,磁気面形状の最適化,外部コイルの逆算,外部コイルを変量とする最適化という,一連の閉じた最適化プロセスを構築し,連続ヘリカルコイルに基づく新しい準ヘリカル対称配位を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適化コードOPTHECSの開発実行環境を整備したこと,連続ヘリカルコイルに基づく新しい準ヘリカル対称配位の構築に成功したこと,外部コイル計算コードにより準軸対称配位および既存の新古典輸送最適化配位の連続ヘリカルコイルによる実現性を示すことができたという当初予定にはなかった成果を得たこと,これらの成果について査読付き論文や国際会議,国内会議において招待講演で発表するといった実績を達成した.また,複数フィラメント電流の集合として有限体積コイルを取り扱う最適化モードの整備など,当初予定にはなかった進展があった.一方で,予定していたSTELLOPT2とOPTHECSによる最適化結果の定量的な比較やOPTHECSのプラズマシミュレータへの本格的な移植作業などは実行途中であり,それらの完了は次年度以降へ持ち越しとなった.プラズマシミュレータへの移植については,各要素コードの個別の移植作業は完了しており,要素コードの呼び出しとMPI並列計算との整合性を同計算システム上に対応させるための新しいアルゴリズムの開発に着手している.これらの点を総合的に考え,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施予定であったSTELLOPT2との比較を完了させる.磁気井戸,磁場の対称性,アスペクト比をターゲットとし,磁気面形状最適化を実施し,その結果および収束性等を比較する.次に,ヘリカルコイルに基づく準ヘリカル対称配位に対して,OPTHECSを用いて有限ベータを考慮した最適化を実施し,真空磁場を仮定した初期結果との比較を行う.固定境界平衡と自由境界平衡の条件の違いが最適化結果にどのように現れるのかを明らかにする.同配位について磁気面を仮定しない平衡コードHINT2による平衡解析およびEMC3-EIRENEによる周辺プラズマ解析を行い,ヘリカルコイルに由来するダイバータレッグ構造の有効性を温度密度分布から判定するとともに,有限ベータ効果によるダイバータレッグ構造への影響を明らかにする.これらの結果から,ダイバータ配位としての成立性を考察する.ダイバータ配位の評価指標として,磁力線結合長と仮想壁上の磁力線フットプリント分布から熱負荷のモデル化を試みる.プラズマシミュレータへのOPTHECSの移植について,非並列プログラムをMPI並列で立ち上げるという方式の新しい実行アルゴリズムの構築を行い,同計算システムを用いた大規模な最適化計算を実現する.
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Causes of Carryover |
最適化コードの開発実行環境として当初計画に従ってメニーコアワークステーションを購入したが,半導体不足の影響により,納入時期を研究計画に間に合わせるには当初予定よりもグレードを下げる必要が生じた.この結果,研究を遂行する上で性能上の問題は生じなかったが,当初予定よりも安価なワークステーションを購入することになった.また,旅費として計上した額については,新型コロナ感染症の影響により海外渡航が困難となったこと,国内で開催された学会もオンライン開催となったことから,旅費の必要が生じず,未使用となった.未使用分について,今年度は海外で現地開催されることが決定している国際ワークショップ発表のための旅費として主に使用する計画である.また,ワークステーション購入における差額相当分については,計算データをバックアップ保存するための保存メディアの購入,および,最適化の結果得られている自由曲線ヘリカルコイルの形状確認と実製作検討のための3Dプリントサービスの利用に充て,成果発表および共同研究者との議論を加速させることを計画している.
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