2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation on chemical reactions induced by discharge with historical atmospheric composition and application for controlled synthesis of bioactive molecules
Project/Area Number |
21K13906
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 渉太 東北大学, 工学研究科, 助教 (90823526)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 大気圧プラズマ / 大気放電 / 五酸化二窒素 / 活性酸素種 / 活性窒素種 / 活性硫黄種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,数十億年間の大気組成変遷を再現して放電させ,生成される活性種反応場の解析・制御と細胞生理応答計測を同時に行う「効率的な新規生理活性分子種スクリーニング実験系」によって,新規生理活性分子種(群)を同定,その制御合成を行うことを目的としており,当該年度は以下の研究成果を得た. 1.主に現代大気を使用して,2つの独立したプラズマユニット内にて,それぞれ大気放電を生成した.各プラズマユニットから排出される大気放電活性ガスを混合し,その後の反応時間をチューブ径・チューブ長によって制御しながら,FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)により,各時刻での気相活性種密度を定量した.また,片方のプラズマユニットでのみ放電させた場合と両方のプラズマユニットで放電させた場合のそれぞれにおいて,ガス流量比や放電電力を変化させながら,網羅的に計測することで,大量の活性種組成データを取得した.さらに,これら実験データを説明可能な0次元化学反応モデルの構築に成功した.これらの理解により,五酸化二窒素を含む気相活性種の組成を精密制御できることを実証した. 2.1で開発した精密制御された大気放電活性ガスを用いて液体を処理して,液相活性種濃度を定量した.長寿命活性種である過酸化水素・亜硝酸・硝酸の他に,硫化水素を計測する手法を確立し測定した.その結果,数十億年前に海洋中に高濃度で溶存していたとされる硫化水素と大気放電活性ガス中の活性種が反応し,ポリサルフェンなどの活性硫黄種が生成される経路があることを突き止めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた気相活性種精密制御プラズマ源の開発と活性種の網羅的計測を進め,精度良く予測可能な0次元化学反応モデルの構築に成功した.また,当初予定していなかった液相活性硫黄種の検出方法を確立し,かつ大気放電活性種と硫化水素の反応から実際に生成されていることを発見した. 以上の理由により,当初の計画以上であると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を踏まえて,最終年度は以下の研究を推進する. 1. 大気放電中気相反応の解析,2. 大気放電が誘起する液相反応解析 0次元化学反応モデルで予測された活性種組成を,実際に実現可能かどうか検証する. また,液相活性硫黄種に着目し,その生成経路・メカニズムを実験・計算モデルの両面から明らかにしていく. 3. 大気放電活性種・活性生体分子によるCa2+応答解析 精密制御された大気放電活性ガスを用いて動植物を処理し,誘導されるCa2+応答の計測を行い,新しい生理活性分子の同定に挑む.
|
Causes of Carryover |
半導体部品不足の影響で,購入予定であった高電圧電源の納期が予定よりも延びたため,次年度使用額が生じた.プラスチック製品の納期遅延なども生じており,全体的な予算執行計画の見直しが必要になっている. 一方で,今年度は活性硫黄種の反応に関して,重要な成果を得ており,当初計画していないかった液相活性種計測を,次年度に行う予定である.この新しい液相活性種計測実験系を確立する物品(液体流路作成や溶存ガス測定装置など)に予算を使用する予定である.
|
Research Products
(22 results)