2021 Fiscal Year Research-status Report
高周波プロセスプラズマにおいて真空容器壁面の状態がプラズマに与える影響の評価
Project/Area Number |
21K13907
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 陽香 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (80779356)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラズマ電位 / プロセスプラズマ / シース |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の半導体製造プロセスには、高周波容量結合型プラズマや誘導結合型プラズマ(ICP)に低周波RFバイアスを組み合わせたプラズマ装置が使用され、金属汚染を抑制するため、プロセス容器の内部壁は絶縁酸化物で被覆されている。酸化物被膜はプラズマの曝露により劣化していくが、これによりプラズマ電位が変動し、イオンエネルギー、つまりプロセスの精度に影響を与える可能性がある。 本研究ではプロセスプラズマ中の壁面の状態がプラズマに与える影響の評価を目的とする。容器壁のインピーダンスが変化した際のプラズマ電位および容器壁の電位について、プローブを用いて計測し、電気回路論と組み合わせることにより、装置内でのRF振動成分およびDC成分の電位変動のモデルの構築を行い、プロセスプラズマの安定制御の指針を得る。 2021年度は、ICP装置内に、プラズマの発生領域を制限するライナーおよび、バイアス印加用の低周波バイアスステージを設置した装置を作成した。このライナーは装置(シャーシアース)から電気的に浮遊しており、絶縁被覆された壁を模擬している。被覆劣化による接地面露出を模擬するため、ライナー内に微小接地電極を挿入した。ステージとライナーにおけるpeak-to-peak電圧とDC電圧を、ステージのpeak-to-peak電圧の関数として測定した。その結果、簡易的な等価回路を用いることにより、シースの厚さの変化や接地面周囲のシース面積が変化よって、ステージとライナーの電圧が変化することが示唆された。また、実験値から計算された解析的プラズマ電位をシミュレーション結果と比較したところ、良い一致を示した。原子層エッチングプロセスのような低バイアス電圧、高密度プラズマの条件下では、小さな接地面の露出がチャンバー内の電位構造、つまり、ステージ上の基板に入射するイオンエネルギーに影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではプロセスプラズマ中の壁面の状態がプラズマに与える影響の評価を目的としており、特に絶縁被覆されたような、電気的に浮遊した壁に囲まれたプラズマの電位構造や、シース構造、シースに発生する電圧やイオンエネルギーに着目している。 2021年度においては、電気的に浮遊しているライナーで囲まれたプラズマに対して、微小な接地面が与える影響について調査した。まず、ICP電力を変化させた際のプラズマ密度を計測し、プラズマ密度が電力対して線形増加することが明らかとなった。次に、電気的に浮遊しているライナーおよびステージの電圧を、高電圧プローブを用いて測定した。測定結果から、ライナーの浮遊容量と、ステージ前面および、ライナー前面に発生するシースが持つ容量によって構成される等価回路において、ステージに印加している低周波バイアスが各容量によって分配されていることが示唆された。また、測定された各電圧を用いて、プラズマのDC電位およびpeak-to-peak電圧を解析的に求め、ステージに対するイオンエネルギーの評価や、接地面積に対する変動の評価を行った。この結果は3次元流体シミュレーションから求めたプラズマ電位とよく一致した。 簡易的な等価回路モデルを用いながらも、ステージ、ライナー電位からの浮遊壁に囲まれたプラズマの電位の推定が可能となり、さらには、浮遊壁内に接地面が露出した際の影響についても評価がなされた。 しかしながら、本実験ではステージ、ライナー、接地電極前面に発生するシースを静電容量と仮定するとともに、プラズマの空間構造については無視した解析となっている。そのため、プラズマの空間構造やシースの構造も含めた解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究において、ライナー壁電位とバイアスステージ電位の測定によって、浮遊壁に囲まれたプラズマ電位が推定された。また壁の状態が変化した際の、ステージ-プラズマ-ライナー壁の電位構造の変化について評価した。しかしながらプラズマの空間構造を無視した一次元的な解析となっていたことから、次年度においてはプラズマの空間構造、特にシースの空間構造の評価を行う。 プローブなどの接触計測はプラズマの擾乱を引き起こすことや、浮遊壁に囲まれたプラズマの計測が困難であること、シースの計測は適応できないことから、光学的手法を用いる。まずは、カメラを用いてステージ周辺のシースについての観測を行う。カメラ画像は三次元情報を撮像の方向に対して積算して二次元化したものとなっているため、二次元の積算情報から、三次元的な断面構造情報に再構成する必要がある。そこで、チャンバーに設けた多方のポートから複数台のカメラを設置する治具を作成し、カメラのフォーカス位置を変えながら複数台同時に撮影を行う。また別の実験において、カメラの特性評価を行い、これらの情報を元に、画像の再構成を行うことにより、シースの空間構造の評価を行う手法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた物品が現有品や中古品で代用可能であったため、当初予定より使用額が減少した。 次年度においてはプラズマ構造の2-3次元的な測定を行うため、複数台のカメラ、カメラコントロール用のソフトウェア、画像解析用のコンピュータさらにはソフトウェアが必要となる。これらの購入費用に充て、さらなる研究の発展と進捗を目指す。
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