2021 Fiscal Year Research-status Report
中性子星連星合体の電磁波対応天体の正確な予測に向けた研究
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21K13912
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 恭平 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60822210)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重力波天文学 / 電磁波対応天体 / kilonova |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子星を含む連星の合体は地上重力波検出器のメインターゲットであるが、様々な突発電磁波現象の母天体でもある。その中でも赤外線や可視光域において明るく光るKilonovaという現象からは、連星合体の極限環境物理に迫ることができると期待されている。本研究では、中性子星を含む連星の合体現象を直接・一貫したシミュレーションしたデータを用いて物質の密度・元素組成分布を正確に予測し、さらに詳細な物理過程を考慮した輻射輸送計算を行うことで、正確なKilonova光度曲線を計算する。これにより観測で得られるデータと連星合体の物理の対応関係を明確にし、今後多く成されると期待されるKilonova観測に備えることが目的である。 本年度では、中性子星連星合体の数値相対論シミュレーションによって得られた流体情報を境界条件とし、長時間流体シミュレーションを行うことで、放出物質の長期的流体進化を明らかにすることができる数値計算コードを開発し、さらに得られた密度構造と元素合成計算による元素組成分布を合わせて、Kilonova光度曲線の計算を行うことができる手法を確立した。実際に、この手法を最新の中性子星連星合体数値相対論シミュレーションの結果に適用し、その光度曲線の予測と、これまでの簡素化された放出物質モデルを仮定した計算結果との違いを調べた。具体的には、合体後に大質量中性子星が長時間重力崩壊せずに残る場合の中性子星・中性子星合体では、そのKilonovaが以前観測されたものよりも可視光領域の波長で暗くなることを示した。 さらに、熱平衡から外れた原子の励起・イオン化準位分布がKilonova光度曲線に与える影響を簡単なモデルで調査し、電磁波対応天体予測においてこうした非熱平衡状態の考慮が定性的にも重要となりうることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、今回の研究計画の核となる計算手法を確立することができ、さらにその手法を用いた研究を論文や学会発表で発表した。特に、合体シミュレーションから一貫して放出物質の長期的流体力学的発展を解き、電磁波対応天体の光度曲線までつなげた結果は先進的なものである。また、熱平衡から外れた原子の励起・イオン化準位分布がKilonova光度曲線に与える影響の調査も共同研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、今年度で確立した、放出物質の長期的流体力学的発展を合体シミュレーションから一貫して計算し、現実的な物質・組成分布を基づいたより正確な電磁波対応天体予測を可能とする手法を用いて、さまざまなセットアップの連星合体について調べることで、Kilonovaをはじめとする電磁波対応天体の多様性を調査する。具体的には、合体後にブラックホールが形成される場合の中性子星・中性子星合体や、中性子星・ブラックホール連星合体についてこれらを調べる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による出張制限により旅費の出費が予想外に少なかったこと、また半導体の供給不足によるコンピュータやハードディスクといった物品が品薄、もしくは高騰したため購入を見送ったことが理由である。次年度においては、これら本年度に使いきらなかった予算を活用し、研究計画遂行に必要な計算機やストレージの購入を行うとともに、出張制限が緩和されるタイミングを見計らって、積極的に他研究機関に赴き、研究成果の発表や議論をおこなっていく予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 連星中性子星2021
Author(s)
Kyohei Kawaguchi, Sho Fujibayashi, Kenta Hotokezaka, Masaru Shibata, Shinya Wanajo
Organizer
天文学会 2022 春季年会
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