2022 Fiscal Year Annual Research Report
中性子星連星合体の電磁波対応天体の正確な予測に向けた研究
Project/Area Number |
21K13912
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 恭平 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60822210)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 重力波天文学 / 電磁波対応天体 / kilonova |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子星を含む連星の合体は地上重力波検出器のメインターゲットであるが、様々な突発電磁波現象の母天体でもある。その中でも赤外線、可視光域において明るく光るKilonovaという現象からは、連星合体の極限環境物理に迫ることができると期待されている。本研究では、連星の合体から直接・一貫したシミュレーションにより物質の密度・元素組成分布を正確に予測し、さらに詳細な物理過程を考慮した輻射輸送計算を行うことで、正確なKilonova光度曲線を計算することを目的とする。 本年度では、昨年度において開発した、中性子星連星合体の数値相対論シミュレーションから一貫して放出物質の長期的流体進化とKilonova光度曲線を計算することができる数値計算コードを用いて、長時間重力崩壊せずに残る大質量中性子星が形成された場合において、ダイナモ効果による磁場の増幅が放出物質と光度曲線に与える影響を調べた。また、星間ガスと放出物質の相互作用によって起こると予想されるシンクロトロン放射についても、得られた遷相対論的放出物質の分布を用いることでその光度曲線を計算し調べた。その結果、ダイナモ効果によって大質量中性子星の磁場が大きく増幅された場合、高い輝度を持つシンクロトロン残光が合体イベントに付随する可能性があることを明らかにした。また、Kilonovaの輻射輸送計算を行い、磁場が大きく増幅された場合、キロノバは初期には明るく、数日で急激に減少する可視光と近赤外線で非常に明るい長残光を示すことを明らかにした。これらの特徴はGW170817には見られず、GW170817で形成された大質量中性子星では、数百ms以内にブラックホールに崩壊したか、磁場増幅が顕著ではなかったである可能性が示唆された。
|
Research Products
(8 results)