2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13928
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
横倉 諒 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 日本学術振興会特別研究員 (PD) (80837831)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジー / 高次対称性 / 高次群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アクシオン電磁気学における高次対称性とその高次群構造を研究した。特に、アクシオンと電磁波が共に質量を持つ場合、低エネルギー極限に4次群が創発することを示した。本研究では、アクシオンの質量項を離散対称性を持つ周期的ポテンシャルで導入した。また電磁波の質量項については、シュテュッケルベルク作用と呼ばれるヒッグス機構を起こす有効作用を用いた。この時、ヒッグス場の電荷は超伝導体のクーパー対のように一般に1よりも大きいことを仮定した。この有質量アクシオン電磁気学の有効作用が、アクシオンと電磁波の運動項が無視できる低ネルギー極限では、トポロジカルな項のみで記述できることを示し、この有効理論を「トポロジカルアクシオン電磁気学」と名付けた。 次に、このトポロジカルアクシオン電磁気学における保存量を運動方程式やビアンキ恒等式から導くことで、高次対称性を特定した。そして、保存量同士の相関関数から、この理論に4次群の構造が存在することを示した。さらに、保存量に結合する背景ゲージ場を導入し、ゲージ変換則が理論と整合するように構成することで、4次群のゲージ理論を決定した。この背景ゲージ場のゲージ変換から理論に存在するトフーフト量子異常を決定した。 この量子異常から、アクシオンドメインウォールに磁束渦を交差させると、その交差点に一般に分数電荷を持つ粒子が現れることを示した。その粒子がエニオンとして振る舞うことを、アクシオンドメインウォールと磁束渦の相関関数が分数位相を導くことにより明らかにした。 上記の研究に加えて、右巻き・左巻きの粒子の差がある系などのローレンツ対称性を破る外場がある系で、連続的な高次対称性の自発的破れに伴う南部・ゴールドストンモードが不安定になる場合があることを、高次対称性の観点から一般的に論じた。この研究により、場の量子論の相構造の多様性を高次対称性から論ずることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、有質量のアクシオン電磁気学の高次群構造を特定できた。本研究に関する論文は学術誌で出版された。また本研究の成果を研究会で発表することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
トポロジカルアクシオン電磁気学の高次対称性を調べることで、4次群対称性を持つ具体例がわかった。この研究で得られた知見をもとに、今後は高次群対称性を持つ理論の一般的性質を明らかにしたい。特に、相構造やトフーフト量子異常を調べることを目的とする。この研究によって、場の量子論の相構造を対称性の言葉で詳細に明らかにすることができると期待できる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、国際会議で現地に赴いて発表することや、共同研究のための出張をすることが困難であったため、主に今年度分の旅費が未使用となった。本使用額は、次年度に、今年度行えなかった出張も行うための旅費として使用することを計画している。
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