2021 Fiscal Year Research-status Report
超小型衛星に搭載したX線撮像検出器による重力波源極限環境の探究
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21K13938
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
澤野 達哉 金沢大学, 先端宇宙理工学研究センター, 助教 (40738051)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線検出器 / 宇宙物理学 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コンパクト連星合体によって形成された相対論的ジェットや合体直後の高密度天体の周辺環境を、X線・ガンマ線帯域の観測により探究する。 令和3年度の目標であるX線撮像検出器のエネルギースペクトル応答関数の構築を行った。放射能が較正された密封放射性同意元素Co-57、Cd-109を用いて、X線撮像検出器のストライプ型シリコン半導体検出器とアナログデジタル集積回路によるX線検出効率とエネルギースペクトルの測定を行なった。得られたスペクトルを再現する解析関数によるモデル関数を調べた。先行研究にならい、シリコン半導体検出器の物理構造を反映した光電ピーク、Siエスケープピーク、隣接チャンネルへの電荷分割による不完全事象、の3つの成分を考慮し、それぞれ2つのガウス関数と誤差関数でモデル化した。さらに、これらを足した物理応答のスペクトル形状に、電子回路によるエネルギー閾値を誤差関数により掛け合わせたモデル関数を検出器のモデル関数とし、関数パラメータの最良推定値を最尤法により決定した。線源測定による単色入射X線エネルギーに対して、関数パラメータのエネルギー依存性を求めた。いずれのパラメータも1次関数で追従される緩やかなエネルギー依存性をもつことが判った。このパラメータのエネルギー依存もモデル関数で表すことで、任意のエネルギーに対するエネルギースペクトル応答の構築ができた。 衛星打ち上げを想定した搭載機器のかみ合わせ試験を行なった。X線撮像検出器は当初、突入電流が2Aと大きく、衛星の電源系では過負荷となって駆動ができないことが判った。そこで、基盤実装部品を付け替え、電圧生成集積回路周辺の時定数を変更して、突入電流を1.5A以下に低減する改良を行なった。結果、衛星の電源系においても観測機器を駆動できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標とした任意のエネルギー入射に対するスペクトル応答関数の構築ができた。 斜め入射に対する応答関数の検証が残っているが、線源を検出器の比較的近傍に設置して正面入射用の試験データを測定したため、同じデータの検出器端のチャンネルを使用することで斜め入射の検証も可能である。 また、スペクトル応答関数の構築ができたため、打ち上げ後の観測から適切にエネルギーフラックスを定量化する準備が整った。 さらに、任意の2つのエネルギーバンドで測定した光度曲線の強度比ハードネス・レシオから、入射X線のスペクトル形状を推定できる。本課題の目標の1つである天体らしさを自動判定するシステムの構築の基礎となるデータである。 一方、令和4年4月22日にJAXAプレスリリースにて報道があった通り、イプシロンロケットによる衛星輸送が予定変更となり、代替機での輸送が必要となった。今後、代替機での観測装置および衛星の打ち上げ環境に対応するための検討、検証が新たに必要となる。 重力波観測機器の測定シーズンは現状2022年12月以降であり、観測機会の大幅な縮小は想定されず、インパクトは小さいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
輸送機が変更となったため、その打ち上げ環境に耐えられるかの検討、検証計画に変更を要する。振動試験環境で観測機器の破壊がないように構造部分に対して脆弱な部分がないか一層注意して検討する。 斜め入射時の応答関数が正面入射に対してどのように影響を受けるか、高エネルギーX線を入社した場合の応答関数への影響を確かめる。 天体らしさを自動判定するための指標であるハードネス・レシオをが課題で開発したX線検出器の場合においてどのような値をとりうるか調べ、定量化する。
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Causes of Carryover |
人工衛星を打ち上げる輸送機が変更となったため、必要な環境試験が来年度に順延されたため。物品購入を1年次目に前倒しし、一方で必要な環境試験の実施のため、2年次は当初計画より旅費をより多く使用する予定である。
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