2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of fine pitch pixel readout gas TPC detector for direction-sensitive dark matter search
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21K13943
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東野 聡 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (00895469)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / ガス検出器 / ピクセル検出器 / ASIC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、既存のシリコンピクセル検出器を流用してガスTPCを開発し、方向に感度をもつ暗黒物質探索を行うことを目的としている。研究計画の初年度となる本年では、シリコンピクセル検出器を選別し、それを用いた簡易的なガスTPCを作成し、検出器の動作やデータ収集システムの問題点を洗い出すことを目的としていた。しかし、本来仕様する予定だったシリコンピクセル検出器ではガスTPCとして機能させることができないことが発覚し、大幅な研究路線変更を余儀なくされた。この経緯により、本年はシリコンピクセル検出器に代わる検出器選定から研究を開始した。 検討の結果、残念ながらガスTPCの信号を読み出せる既存ピクセル型検出器は存在しないことが発覚したことにより、新たな検出器を開発する方針をとることにした。この検出器の肝は膨大な数かつ微細なピクセル状電極の読み出しをいかに行うかであり、それには専用の読み出しASICが必要となる。このASICの開発は、以前試験用に開発されたQPIXとSTRIPIXとそれぞれ呼ばれるプロトタイプASICが佐賀大にて保管されていたため、それらを発展させる方針で行うことにした。まず、未だガスTPCとして動作することが確認できていなかったSTRIPIXと呼ばれるASICの動作確認を宇宙線を用いて佐賀大にて行い、正常に動作することを確認した。これによりSTRIPIXの回路部を新規開発ASICに流用可能なことがわかった。 上記をもとに、実際に新型ASICの仕様選定や回路設計段階に移行した。新型ASIC開発はKEKのE-Sysグループの協力のもと行うことにした。ASICの仕様を決定したのち、回路設計の実施段階で本年の研究を終えた。ASICは次年度6月に製造を開始し、9月ごろから動作試験実施予定である。 以上の内容について、国内研究会で3件の口頭発表を本年度に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要の通り、本来使用する予定だったシリコンピクセル検出器では、開発予定であったガスTPCの読み出しに対して仕様が合わないことが判明し、大幅な研究路線の変更を余儀なくされた。該当年の計画では、ピクセル検出器を用いたガスTPCを実際に開発し、その問題点を洗い出すことを目標としていた。 実際には、新たにピクセル検出器を開発することから開始しており、現在開発物の仕様を決定したのちの設計段階である。検出器にはASICの他にガスTPCの筐体や電場形成機構などが必要なため、それらの開発や問題点の洗い出しができていないことから、研究がやや遅れていると判断した。 一方、ピクセル検出器における仕様については、暗黒物質探索のためのガスTPC開発をあからさまに目的とした読み出しASICとして開発を行っている。従来の研究方針では既存のシリコンピクセル検出器を流用する予定であり、その設計思想の違いから大きな問題が発覚することを恐れていたが、本年では専用のASICを開発することにしたため、そのような事態は事前に回避できた。 従来の予定では、次年度は新規読み出し開発を予定していたが、これは新型ASICを開発することになっても同様であるため、次年度からはおおまかには従来の予定通りに開発が進められると想定している。上述したガスTPC筐体や電場形成機構などのハードウェア開発については次々年度に行うことにする。以上の理由により、研究にはやや遅れはあるが大きな遅れではないと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年6月に新規開発ASICの製造を開始する予定で、そのために現在回路設計やレイアウトの設計を行っている。進捗はKEKのE-Sysグループと隔週で打ち合わせを続けながら実施できており順調である。6月以降はASICを搭載するためのテスト基板の設計、製造に取り掛かる。9月ごろにASICやテスト基板が諸々できあがると想定しており、出来上がり次第市販のFPGA搭載ボードを用いた読み出しシステムの構築に移行する。 ASICの開発については、2022年6月に行う開発はプロトタイプ版の製造という位置づけで行うことにしている。2022年度にその問題点を洗い出し、その年度中に次バージョンのASIC開発を実施する。2023年度(最終年度)にそのASICを用いて小型のガスTPCを開発し、読み出し試験と運用試験を行って暗黒物質探索に実用できることを実証する。 上記の研究計画は、ASICの設計開発に協力いただいているKEKのE-Sysグループとも合意が取れており、引き続き密に打ち合わせを行いながら研究を続けていく。
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Causes of Carryover |
ガスTPCにおいて、電離された電子はGEMという増幅機構を用いて増幅する予定である。本年度に購入予定であったが、本年度に実施したSTRIPIXの動作試験に用いたGEMがそのまま流用可能であることが判明したため、GEMの購入は見送りにした。 一方、次年度に新たにASICを搭載する基板を開発する必要が生じた。予想外の出費が想定されるため、GEM購入予定分の金額を次年度の持ち越して基板開発に使用する予定である。
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