2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of sub-micron track search method for dark matter recoil nuclei with luminescence of nano-semiconductors in nuclear emulsion
Project/Area Number |
21K13949
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
白石 卓也 東邦大学, 理学部, 博士研究員 (00866121)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 暗黒物質 / ナノ粒子発光 / 原子核乾板 / イオン励起発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、約100nmの空間分解能を持つ飛跡検出器である超微粒子原子核乾板を用い、飛跡を構成するAgBr:Iナノセンサーの発光現象を新たな情報として暗黒物質探索に応用することを最終目的としている。 2021年度は、暗黒物質候補WIMPによって期待される反跳原子核の疑似信号として同等なエネルギーの低速イオンを用い、Lindhard領域のエネルギー損失が起こった場合のAgBr:Iナノ結晶の発光応答を理解するための実験装置の開発を目標としていた。神奈川大学の星野氏の協力の元、液体窒素温度下でイオン照射中の試料の発光応答を測定するための新たな拡張チェンバーを設計・構築した。この測定系では、光検出器MPPCによる発光量・時定数測定用と、モノクロメータと光電子増倍管によるスペクトル分光測定用の2経路の発光測定を独自開発しており、同時計数法によって高感度かつ低ノイズでの発光スペクトル測定および高速ADCボードによる波形解析が可能である。この測定系は、波長駆動から発光測定まですべてを通信制御できるインターフェースを開発することで、完全自動化を実現した。 また、サンプルへのダメージによってイオン照射量に依存した消光が観測されていたため、チェンバーの開閉なしでサンプルへの照射位置を変えられるように、2軸駆動可能なイオンマスクの設計も行い、測定の効率化を行った。さらに、当初はサンプルへのイオン照射中のビーム電流をファラデーカップでモニターできていなかったため、金属製のイオンマスクをファラデーカップの代わりとし、サンプルに照射されていないマスク部分でビーム電流がリアルタイムにモニターできるように工夫を行った。 これらの成果についてイオン研究会で発表を行うなど、専門とする分野を越えた議論を行ってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に予定していた発光測定用のイオン注入系開発について、基礎となる拡張チェンバーについては計画通り設計等の議論を神奈川大学の星野氏や外注を行った業者と進めた。汎用性や拡張性を持たせるための念入りな議論を行った結果、当初の予定よりもフランジサービスポートの溶接を増やす、1軸駆動予定だったイオンマスクを2軸駆動に変更する、チェンバーを2分割するなどの特注での設計を行ったため、納期が少し遅れてしまった。チェンバー納入後は何度も神奈川大学へ赴き、駆動系付きのイオンマスク兼ビームモニターの開発や、光検出器・電子回路・高速ADC搭載のFPGAなどのハードウェアの開発に注力し、最終的にソフトウェアも含めた動作確認を行うことができた。次年度からは本システムを実際に運用し、反跳原子核と電子事象の発光特性の違いを調べ、発光トリガー時の分離能の評価を行っていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、反跳原子核の疑似信号として低速イオンを用い、イオン励起における発光特性の理解を進める。超微粒子原子核乾板中の反跳原子核飛跡の発光トリガー時に、同時にトリガーされ得るゼラチン中のC14由来のβ線に対しても線源を用いて同様の測定を行う。反跳原子核とβ線に対する波長や時定数などの発光特性の違いを調べ、エネルギー損失メカニズムの違いに起因した粒子識別能を評価する。さらにC14自体の低減のために、ゼラチン以外の高分子ポリマーを用いた原子核乾板の開発についても検討する。 その後、発光からの原子核反跳点特定の方法としてアレイ光検出の検討を行う。64chのMPPC、およびプリアンプ・電源回路の設計、波形解析のためのADCボードの導入を行う。反跳原子核とβ線の発光特性の違いから、バンドパスフィルターや波形解析を通して粒子識別における差別化を行う。さらに、C14自体の低減のために、ゼラチン以外の高分子ポリマーを用いた原子核乾板の開発についても検討する。最終的には産総研の単色中性子を用いて、発光からの原子核反跳飛跡の位置特定の実証実験を行う。
|
Causes of Carryover |
2021年度末に行われた日本物理学会第77回年次大会の旅費として充てる予定であったが、オンライン開催に変更となったため未使用額が生じた。次年度の旅費としては、神奈川大学でのイオン励起による発光測定、名古屋大学での原子核乾板乳剤製造、その他学会・研究会での成果報告のために使用する予定である。備品・消耗品としては、イオンビーム電流モニターのためのピコアンメータや、アレイ光検出のための多チャンネルのMPPC・プリアンプ・電源回路・ADCボード等の購入のために使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)