2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K13955
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川内 紀代恵 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (70851418)
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Project Period (FY) |
2021-11-01 – 2025-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / 惑星大気 / 近赤外高分散分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在5000個以上発見されている系外惑星のうち最も普遍的な惑星は、太陽系には存在しない地球よりは大きく海王星よりは小さい惑星(小型惑星)である。これらの惑星がどこで形成されどのように進化してきたかを調査するには、惑星大気を直接観測し大気構造を理解する必要がある。 本研究の目的は、小型惑星大気中のヘリウム存在の有無を観測し、提唱された理論と比較することで、個々の大気構造に制約を与えることである。よって海外渡航による中断から明けた8ヶ月間は、中断前に確立した手法を基に、すばる望遠鏡に搭載されている近赤外高分散分光装置(IRD)で新たに観測された2天体の小型惑星について解析をおこなった。その結果、1天体において惑星大気中のヘリウム吸収線の特徴が観測された。そこで、以前に解析した3天体を含めこれらの解析結果をすばるユーザーミーティング等で発表した。また、ヘリウム吸収線の特徴が観測された惑星は離心率を持っている。よって、恒星が惑星の前を通過する(トランジット)中の惑星の視線速度は円軌道を仮定した場合と異なる。そこで離心率を考慮した惑星の視線速度を計算し補正するパイプラインを作成した。現在、簡易な理論モデルと結果を比較し、どのような大気について制約できるかも調査しており、その結果を論文としてまとめる予定である。 また、本研究でターゲットとしている天体は、トランジット系外惑星探査衛星(TESS)で新たに発見された太陽系近傍のM型星まわりの惑星である。そこで、TESSで新たに発見した惑星の半径や質量を求める観測に貢献しつつ、新たに本研究に適した天体についての大気中のヘリウムを検出するための観測提案をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の1年目の予定は、解析手法を確立し1天体において大気中のヘリウムの有無を調査し、理論モデルと比較して制約をかけるというものであった。 現在解析手法は確立し、これまで観測した5天体において解析をおこなった。 しかし、理論モデルと比較しどこまで制約ができているかという点がまだ調査中であるため、 おおむね順調に進展しているという区分にした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、現在観測し解析をおこなった5天体について簡易な理論モデルと比較し、どこまで制約できるかを調査する。また、これまでの結果より惑星大気中のヘリウムが非検出である天体が多い。そこで、それらの原因を調査するために他の原子や分子の吸収線が検出可能かも検討する。さらに、パラメータとの相関等を求めるためには多くの惑星での調査が必要であるため、新たに発見された惑星について観測提案をし継続的な観測をおこなう。
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Causes of Carryover |
申請者は令和3年8月から令和4年8月まで海外の研究員であったため中断をしていた。その結果、国内学会等での発表が予定より少なかった。また、コロナによるオンラインでの講演が多かったため、予定より少なくなってしまった。次年度は国際学会や国内学会が現地開催となっているので、それらに参加するための予算に未使用額をあてる予定である。他は予定通り、論文掲載費や海外共同研究者との国際共同研究費に使う予定である。
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