2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K13956
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柏野 大地 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (80897588)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 銀河形成 / 宇宙再電離 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の主な研究実績は以下の通りでさる。1) 多数の銀河の分光観測データを用いて、約100億年前の銀河の若い星成分に含まれる金属イオンの割合(金属量)を推定し、金属量が銀河の質量と強い相関関係を示すことを明らかにした。また、同じ質量で比べたときに、現在の銀河よりも2~5倍程度金属量が低く、また酸素対鉄存在比が高いことを明らかにし、これらの観測結果を銀河の化学進化モデルを用いて解釈した。これらの結果は、査読付き欧文誌アストロフィジカルジャーナル誌より出版された (Kashino et al., ApJ, 925, 82, 2022)。2) 欧州南天天文台VLTを用いた強い輝線を示す赤方偏移0.8の銀河の輝線分光観測を2021年8月に完了し、データ解析を行なった。これらは「宇宙再電離」で重要な役割を果たした銀河の類自体と考えられる銀河で、詳細な観測を行うことで再電離機の銀河が再電離にどのように寄与したかについての知見を得ることを目指している。本観測により、これらの銀河が予測通り強い輝線を示すことを確認し、水素や重元素イオンの輝線強度を測定することで、ガスの物理状態を明らかにした。さらに電離ガス周辺の中性水素ガスが非常に希薄であること、これにより大量の電離光子が漏れ出ている可能性があることを示した。これらの成果は2022年3月の天文学会春季年会において報告された。現在論文を執筆中である。3) すばる望遠鏡HSCを用いて行なっている再電離期末期における大局的中性水素密度構造と銀河分布の関係の調査において、ライマンアルファ輝線銀河と呼ばれる種族の銀河では、その中性水素密度と銀河数密度の間の分散が大きいことを明らかにした。これらの結果は、欧文誌に投稿され、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題設定時に行なっていた観測はほとんどが順調に完了しており、データ解析も予定通りに進んでいる。特に、2022年度中に論文執筆を予定していたテーマ(上記実績の2に関連する内容)について、すでにほぼ全ての必要なデータ解析が終了し、論文執筆に取り掛かかっている。また、本課題では宇宙望遠鏡JWSTによる観測をその土台に据えているが、望遠鏡自体の打ち上げ・観測準備は順調に進んでおり、予定通り2022年夏頃から科学データを取得できる見込みである。また、データが得られればすぐに科学的な成果に結び付けられるように、解析に必要な準備を行なっているが、こちらも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の進捗は概ね予定通りであるため、2022年度も申請時の計画に沿って進める。すなわち、JWSTにより得られるデータの解析が主たる作業となる。夏までに幾つかのターゲットが観測される予定である。これらのデータの初期解析によって得られる結果(銀河計数、酸素輝線光度関数、また可能であれば銀河分布と中性水素密度の相関)などを報告する予定である。また、現在行なっている赤方偏移0.8の強輝線銀河の性質についての論文を完成させる。また、これらの銀河についてさらなる情報を得るため新しい観測を提案する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた国外研究会が新型コロナウイルス感染蔓延により翌年度 (2022年度) に延期されたため、国外出張1回分相当の次年度使用額が生じた。次年度使用額は2022年度分助成金と合わせ、延期された研究会への参加に使用する。
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Research Products
(10 results)