2021 Fiscal Year Research-status Report
フォールバック降着の定量化による、多様な超新星爆発での統一描像の構築
Project/Area Number |
21K13964
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 涼 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (50887908)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超新星 / 元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
重力崩壊型超新星爆発(以下、超新星)は、数多くの天体現象・宇宙物理の謎を解き明かす鍵を握っている。例えば超新星は、中性子星や恒星質量ブラックホールの形成過程そのものであり、銀河の力学進化を駆動する。さらに近年、全天サーベイと即時観測の発達により、標準的な超新星シナリオでは説明困難な“標準外の超新星”の観測例が増えている。さらには標準的な超新星のなかでも、従来の理解に比べて幅広い多様性が存在することが報告されはじめている。つまり、銀河の化学進化・力学進化を正しく理解するためには「どのような星が、どんな超新星爆発を起こすのか?」、その多様性を理解することが欠かせない。 2021年度の実績として、近年観測されるようになった“標準外の超新星”のひとつである ultra-stripped supernovae (USSNe) のエネルギー源について、系統的検証を行った。具体的には、Suwa et al.(2015) で計算されたUSSNのprogenitorとなるCO星1.45-2.0Mの7modelについて、1次元流体力学・元素合成計算を系統的に計算して、その結果を基に解析的光度曲線モデルから、対象天体 (SN 2019dge, iPTF 14gqr) との比較を行った。本研究の結果、iPTF 14gqrの光度曲線を流体力学ベースで再現することは困難であり、USSNに見かけ上の「56Ni問題」が存在することを明らかにした。また観測されているUSSNを説明するためには、代替エネルギー源としてマグネター程度の磁場強度と初期周期をもつ原始中性子星からのパルサー風が寄与する可能性を明らかにした。本結果は自身が筆頭著者の論文として国際査読誌(The Astrophysical Journal) にて発表されている(Sawada, Kashiyama & Suwa, ApJ 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆頭著者の論文1報(Sawada, Kashiyama & Suwa, ApJ 2022)の受理実績から、極めて順調に進展しているという判断が妥当と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要でも掲げた本研究の大目標に向けて、更なる“標準外の超新星”の爆発機構制約を試みる。具体的に、Sawada, Kashiyama & Suwa, ApJ 2022 の結果から、超新星内 部で起こるfallback が光度曲線へ大きく寄与することが分かった。そして同時に、 fallback の物理が爆発機構の制約に重要な役割を果たす可能性が浮上してき た。今後この考察を深め、超新星内部の fallback の物理に関する新たな研究展開を遂行する予定である。その結果を論文にまとめるまでも目標の一つに加えた い。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる各種学会のオンライン化・休会に伴って、申請当時予定されていた旅費仕様が無くなったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)