2021 Fiscal Year Research-status Report
矮小銀河残骸から再現する銀河系の歴史年表:位相空間に隠された力学時計の探求
Project/Area Number |
21K13965
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
服部 公平 統計数理研究所, 統計思考院, 助教 (20895627)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 銀河系力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
標準的な宇宙論によれば、銀河系ハローは小さな恒星系(矮小銀河や球状星団)との衝突・合体を繰り返して形成されたと考えられている。この予想を裏付けるように、ハローには恒星ストリームと呼ばれる筋状に分布した恒星がなす構造が多数確認されている。恒星ストリームは、銀河系と衝突し、今まさに破壊されつつある恒星系であり、筋状の構造は、恒星系の軌道にそって分布している。恒星ストリームを観測することで、銀河系の衝突・合体の歴史の中でも比較的最近(過去1-50億年)の歴史を調べることができる。一方、100億年程度昔に銀河系に衝突した恒星系は、ストリームのようにコヒーレントな構造を持っておらず、完全に破壊されている。そのため、太古の昔に銀河系がどのような矮小銀河と衝突を経験したかを調べるためには、完全に破壊された矮小銀河を探すことから始めなくてはならない。
本研究では、位置天文衛星Gaiaによって得られた星の位置と速度の情報を用いて軌道の保存量である作用(orbital action)を計算し、作用の似た(軌道の似た)星を探索することで、完全に破壊された矮小銀河を探索した。このプロセスにおいて最も重要な問題は、星の位置・速度の観測誤差(特に距離データの観測誤差)が作用の誤差に伝播し、作用が似た星の探索を難しくしていることである。そこで、観測誤差を考慮した上で作用の類似した星を探索する新たな統計数理手法(貪欲楽観クラスタリング)を考案した。さらに、その手法をGaiaデータに適用し、6個の新たな矮小銀河残骸を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなクラスタリング手法を用いて矮小銀河残骸を発見できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は200個未満の恒星に集中して解析を行ったが、データサイズを大きくし、さらなる矮小銀河残骸の発見に繋げる。
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Causes of Carryover |
令和4年1月、令和4年3月に開催予定だった研究会が、主催者である東京大学の都合により、令和4年5月以降に延期されることが判明した。本研究遂行上、当該研究会において他の研究者からのフィードバックを得る必要があったため、来年度に本研究会あるいは類似する研究会への参加を行うことを目的として繰越を申請する。
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