2023 Fiscal Year Research-status Report
矮小銀河残骸から再現する銀河系の歴史年表:位相空間に隠された力学時計の探求
Project/Area Number |
21K13965
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
服部 公平 統計数理研究所, 統計思考院, 助教 (20895627)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 銀河系 / 恒星系力学 / 大規模データ |
Outline of Annual Research Achievements |
人類の住む天の川銀河は、小さな矮小銀河の衝突と合体を経て現在の姿になったと考えられている。銀河系の歴史を知る上では、過去にどのような矮小銀河が銀河系に衝突したのかを突き止める必要があるが、衝突した矮小銀河の発見は、(1)力学的な位相混合の効果(2)観測誤差の効果によって、困難であった。本研究では、運動の保存量である軌道作用積分(orbital action)を用いることで(1)の困難を克服し、新たに開発した統計数理手法(Greedy Optimistic Clustering;貪欲楽観クラスタリング法)によって(2)の問題を解決した。 貪欲楽観クラスタリング法は汎用性が高い手法であるが、具体的に本研究で扱うデータを例にとってその応用について説明する。本研究で扱うデータは、(太陽系にいる観測者から見た)星の位置と速度の6次元データである。この6次元データのうち5次元データは人工衛星の観測によって高精度で推定されており、観測者から星までの距離の1次元データに誤差が大きいという特徴がある。本研究では、観測誤差の取りえる範囲で乱数を振ることで合成データを100個生成し、100個の合成データのどれか1つは真値に近いという仮定を置いた上で、クラスタリングを行う。すなわち、「それぞれの星のデータの真値は100通りの中のどれであるか」を推定しつつ、「推定された星のデータの真値をもとにクラスタリングを行う」という2段構えでクラスタリングを行う。この例では貪欲楽観クラスタリング法は扱うデータ量が普通のクラスタリング手法の100倍に増加するため、計算の高速化が実用上の重要な課題である。本年は、この計算の高速化のためのアルゴリズムの改良に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貪欲楽観クラスタリング法の一番の課題は計算の遅さである。本年はこの計算を高速化するアルゴリズムができ、大規模データへの応用が可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
貪欲楽観クラスタリング法を人工衛星Gaiaの大規模データに応用する研究を行う。Gaia DR3によって視線速度データが入手可能な3300万天体のデータから、年齢の年老いた星を10万天体程度選び、クラスタリング解析を行うことで、人類の住む銀河系の形成の歴史を解明することを目標とする。
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Causes of Carryover |
利き手を骨折した際の入院・治療・リハビリで論文執筆に遅延が生じ、論文出版費用を次年度に回す必要が生じたため。
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