2021 Fiscal Year Research-status Report
多様なアーカイブデータの統合で迫る太陽系外惑星の軌道の多様性の起源
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21K13980
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増田 賢人 大阪大学, 理学研究科, 助教 (20874168)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / 惑星形成 / 原始惑星系円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系外の惑星には、円形でない軌道や、恒星の自転に対し傾いた軌道をもつものが存在する。これらの惑星系と、ほぼ円形でよく揃った惑星軌道をもつ太陽系との差異がどのように生じたかは明らかになっていない。地上・宇宙の様々な望遠鏡で取得されたデータを組み合わせることで、[I] 惑星の軌道形状の主星質量への依存性 [II] 恒星の自転に対する原始惑星系円盤の傾きを調べることで、系外惑星軌道の多様性の起源に迫るのが本研究の目的である。
本年度は[I]について、Kepler探査機の観測データから発見された太陽の半分程度の質量をもつ恒星まわりの約100個のトランジット惑星系(Hirano et al. 2020) について、軌道離心率の分布を初めて測定した。その結果、平均は0.2程度であり、複数の惑星がよく揃った軌道にある系では離心率がより小さいことがわかった。これらの結果は太陽と同程度の質量をもつ恒星に対して得られた結果と一致している。このことは、主星の質量に強く依存しない軌道離心率の励起機構が重要であることを示唆する。本研究は大阪大学における修士論文としてまとめられ、現在投稿論文を準備中である。
[II]については、恒星の自転軸傾斜角の導出に用いる射影自転速度データへの理解を深めるため、これらのデータから恒星の自転周期の分布を導出する解析手法を新たに開発し、他の方法で得られた分布との比較を行なった。結果はよく一致し、データの妥当性を検証することができた。開発した手法はこれまでの手法が適用できない恒星種族に対する自転周期の測定を可能にする点でも有用であり、この成果は論文として出版された(Masuda et al. 2022, MNRAS 510, 5623)。また、統計的な解析に用いるサンプルの選定も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマ[I]については必要な解析がほぼ完了した。テーマ[II]についてはその予備的検証が完了し、成果の一部をすでに論文として出版している。これらのことから、本課題は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
テーマ[I]については、結果を投稿論文にまとめる。 テーマ[II]については、1年目の研究で構築したサンプルの各系に対し、(i)原始惑星系円盤の撮像データのモデル化による円盤の傾斜角の導出 (ii)主星の分光・測光データの解析による恒星の自転軸傾斜角の導出を行い、両者の結果を組み合わせることでサンプル全体における円盤と主星の回転方向のずれの分布を推定する。結果を太陽系外惑星系で測定された惑星軌道と主星の自転方向のずれの分布と比較することで、円盤と主星のずれが惑星軌道の主星自転からのずれを説明し得るか否かを明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響で旅費の使用額が予定を下回ったため。次年度の論文出版料などに利用する。
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Research Products
(4 results)