2022 Fiscal Year Research-status Report
宇宙風化模擬実験から探る、太陽系小天体表面の有機物の化学進化
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21K13981
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 徹 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80750455)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙風化 / リュウグウ / 窒素 / 窒化鉄 / 磁鉄鉱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、C型小惑星表面で起こる物質変化の解明を目指している。今年度前半は、昨年度に引き続き、炭素質の小惑リュウグウから持ち帰った試料の初期分析に関わった。 本年の大きな発見は、宇宙風化を受けた複数の砂に含まれる磁鉄鉱の表面が、窒化していることを見出したことである。透過型電子顕微鏡によって元素分布を調べると、磁鉄鉱の表面の50nm程度の領域で窒素が濃集していることがわかった。そこでelectron diffraction mappingを使った詳細な分析の結果、窒化鉄(Fe4N)が磁鉄鉱を覆っていることがわかった。また窒素の濃集層は、鉄の濃度も高く、α鉄の電子線回折パターンも得られた。一方で、宇宙風化を受けた磁鉄鉱で窒素が存在しない粒子も存在し、その表面では50nm程度の深さまで鉄の濃度が高く、α鉄が存在した。この分析結果を以下のように解釈した。(1)リュウグウ表面への太陽風の照射や微小隕石の衝突によって、磁鉄鉱から選択的に酸素が消失し、過剰となった鉄原子からα鉄が生成する。(2)微小隕石の衝突によって生じた蒸気は反応性の高いアンモニアに富み、α鉄と衝突蒸気が反応した結果、窒化鉄が形成した。(2)のプロセスにおいて、リュウグウのようなCIコンドライト組成の衝突蒸気を仮定すると窒化鉄は安定に存在しないことがわかり、衝突物に窒素化合物が豊富に含まれていたと推定した。CI組成よりも豊富な窒素化合物を固体として含む天体は、太陽系の外側に分布する彗星や氷天体が考えられる。この考察は、現在のリュウグウの軌道である地球領域に、CIコンドライトよりも窒素に富む物質が少なからず飛来していることを示唆する。上記の成果を含めたリュウグウの宇宙風化の研究について、夏・冬に開催された国際 学会(イギリス、日本)にて発表を行なった。現在論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、本年度はこれまでに小天体表面で認識されていなかった窒化現象を発見し、その成果を国際学会で報告するとともに、論文投稿までを行うことができた。研究計画では、リュウグウ表面で生成した金属鉄が有機物中の炭素と反応することを予想していたため、窒化鉄の発見は予想外であった。しかし、その生成過程について熱力学的なモデルを用いて考察することができた。一方で、リュウグウの分析を優先することで、予定していた宇宙環境を模擬した照射実験については遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、リュウグウ表面の宇宙風化によって生じた金属鉄が有機物を含む高温蒸気と反応して、炭化などが起きることを予想していた。一方で、リュウグウ表面の金属鉄が窒化していたことは、炭化がなぜ起きないのかという新しい問題を提起している。金属鉄の炭化や窒化のしさすさについて、実験的な検証を行いたい。また、引き続きリュウグウ粒子の金属鉄に注目し、現在A室の試料のみで行なっていた観察をC室においても行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
照射実験のための真空チャンバーおよびレーザーの見積もりを秋に取得したが、納品時期が未定となったため、年度内の購入を見送った。そのため次年度使用額が生じた。次年度は再度見積もりを行い、急激な値上がりがなく、価格が妥当であればこれらを購入したい。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Oxygen isotopes of anhydrous primary minerals show kinship between asteroid Ryugu and comet 81P/Wild2.2022
Author(s)
Kawasaki, N., Nagashima, K., Sakamoto, N., Matsumoto, T., Bajo, K. I., Wada, S., ... & Yurimoto, H
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Journal Title
Science Advances
Volume: 8(50)
Pages: eade2067
DOI
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