2022 Fiscal Year Research-status Report
ダスト層の鉛直構造モデリングが明らかにする円盤進化と惑星形成
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21K13983
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
瀧 哲朗 国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 特任研究員 (20898267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 惑星系形成 / 数値流体力学 / 原始惑星系円盤 / ダスト |
Outline of Annual Research Achievements |
惑星系形成とは原始惑星系円盤の内部で進行する固体物質(ダスト)のサイズ進化過程であると考えることができる.そのため「原始惑星系円盤内部でダストがどのように分布しているのか」というのは惑星系の形成過程を考える上で鍵となる情報である.ALMAをはじめとする近年の大型電波干渉計技術の進展により,我々は10年前に比べると遥かに高解像度のダスト分布を知ることができるようになってきた. さて,ここで言う「分布」とは「空間的な分布」のことを指しているが,これは言うまでもなく空間3次元の情報である.しかしながら,どのような撮像観測であっても得られる情報は本質的に2次元である.それゆえ,いかに優れた観測結果であっても真のダスト空間分布を知るためには失われた1次元分の情報をモデルによって補ってやる必要がある. 原始惑星系「円盤」はその名の通り第ゼロ近似では2次元的な比較的薄い構造であるため,特に「厚み」方向,すなわち円盤鉛直方向の情報を観測から直接得ることは難しい.しかしダストのサイズ進化に直接関わってくるのは鉛直方向に積分されたダスト密度ではなくダストの局所的な空間密度であるため,この鉛直方向分布の情報は惑星系形成過程において本質的に重要となる. 本研究課題では,このダストの鉛直方向分布を数値計算から第一原理計算的に求めることを目指している.本年度は昨年度に引き続き主に計算コードの開発を行った. Athena (Stone et al., 2008) のダストモジュールを改良し,近年の観測,特に円盤ギャップ構造近傍のダスト熱放射分布と比較するのに適した3次元ダスト分布計算を行うための準備が進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コード開発に予定以上の時間がかかってしまっており,現時点でプロダクトランが始められていない.本来であれば当該年度中には計算コードを完成させ,惑星近傍でのダストの三次元分布に関するシミュレーション結果が得られている計画であったため,本研究課題の進捗はやや遅れている状況にあると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
計算コードの問題箇所はある程度特定されているため,近い将来においてプロダクトランを行えるようになる見込みである.当初計画していた国立天文台 CfCA の XC50 システムの利用に加え,補助的な計算資源として同 CfCA の中規模サーバを積極的に用いることで計算を加速させ,計画の遅れを取り戻す計画である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会情勢を鑑みて,計画していた海外出張等を取りやめたことで次年度使用額が生じた.また,研究計画のコード開発がやや遅れていることで計算データの増加量が当初の想定よりも少なかったことに加え,為替の変動に由来する機材の高騰が続いているため,当該年度中に急いでストレージ機材を購入することは不適当と判断し,購入を見送ったことからも次年度使用額が生じた. 次年度において,あらためて海外出張および機材の購入を行うことで当初計画通りの支出が生じる計画である.
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