2021 Fiscal Year Research-status Report
南極海の現代・過去の海洋変遷史:表層堆積物と深海サンゴのNd・Pb同位体比の解析
Project/Area Number |
21K13992
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小坂 由紀子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 産総研特別研究員 (90847360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ネオジム同位体 / 鉛同位体 / 深海サンゴ / 海底堆積物 / 南大洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代の南極海の底層水のネオジム・鉛同位体比の面的な分布を把握し、深海サンゴに記録された過去のネオジム・鉛同位体比の変遷から、南極海の過去の海洋循環の変遷を復元することである。具体的には、(1)南極海で採取された表層堆積物の鉄-マンガン酸化物のネオジム・鉛同位体分析、(2)深海サンゴの年代測定とネオジム・鉛同位体分析に取り組む。試料は過去の研究航海で採取された堆積物コアと深海サンゴ化石を対象とする。 今年度は深海サンゴの年代測定と、ネオジム・鉛の化学分離手法の確立に取り組んだ。深海サンゴ化石の一部試料でU-Th年代測定を行ったところ、他の報告と同様に最終氷期以降の年代分布を示しており、完新世の試料が多いことが明らかになった。また、U-Th年代測定を行った一部の試料に対し放射性炭素年代測定を行い、その年代差からベンチレーション年代の推定を行った。その結果、完新世に形成された深海サンゴのベンチレーション年代が、採取水深の海水の放射性炭素年代の報告値とよく対応していることが確認できた。この成果について学会発表を行った。試料からネオジム・鉛を分離する化学分離では、複数の樹脂カラムと溶離液を用いる。試料を酸や濃度が異なる溶離液に溶解するために蒸発乾固を複数回行う必要があり、前処理に時間を要することが大きな課題である。多数の試料の分離作業を同時に効率良く進められるよう、時間短縮とコスト削減のために今後手法改良を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
堆積物試料は高知大学海洋コア総合研究センターに保管されており、複数名でサブサンプリングする必要がある。しかし、新型コロナウイルス感染症まん延により、当初予定していた国内出張が実施できなかった。これにより、表層堆積物試料の鉄-マンガン酸化物のネオジム・鉛同位体比測定に遅れが出ている。また、当初の計画では深海サンゴのU-Th年代測定を網羅的に実施する予定であったが、放射性炭素年代測定を網羅的に実施するほうが測定コストを抑えられるため、厳選した試料にのみU-Th年代を実施することにした。放射性炭素年代測定のために国内出張を計画していたが、この計画も上記と同じ理由で実施ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内出張の時期を見極め、今年度中にはサブサンプリングを実施し、表層堆積物の鉄-マンガン酸化物の抽出と分析を進める。これと並行して化学分離手法の改良を進め、1年目の遅れを取り戻す。深海サンゴの年代測定についても、放射性炭素年代測定を網羅的に実施し、試料全体の年代分布の把握を行う。その後、厳選した試料に対しU-Th年代測定を実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のまん延により、国内出張が実施できなかった。これにより、海底堆積物試料のサブサンプリングと、深海サンゴの放射性炭素年代測定が実施できなかった。この出張費用と、関係した実験に使用する消耗品の費用等が次年度使用額となった。 今年度は状況を見極めて国内出張を実施し、海底堆積物試料を用いた実験と分析、深海サンゴの年代測定の遂行のために当該助成金を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)