2021 Fiscal Year Research-status Report
Research for understanding and improving systematic biases of tropical cloud and precipitation processes and El Nino-Southern Oscillation in climate models
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21K13993
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
林 未知也 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 特別研究員 (40898160)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 全球気候モデル / エルニーニョ・南方振動 / 大気海洋相互作用 / 雲降水過程 / 気候モデルバイアス / エルニーニョ / ENSO |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの数値気候モデルが、エルニーニョ・南方振動(ENSO)の発達率に関わる主要な正と負のフィードバック過程の両方が弱すぎるにも関わらず一見正しいENSOの振幅をシミュレートするという、フィードバック系統誤差(バイアス)の相互補償問題を抱えている。これは大気海洋結合モデルの基本場バイアスだけでなく、大気内部プロセスのバイアスにも起因すると考えられているものの、まだよく理解されていない。本研究では、多くの気候モデルにおいて海面水温変動に対する熱帯の雲降水の詳細な変動が観測と整合しない要因を明らかにすることを目的の一つとしている。その達成のために、まず第6期結合モデル相互比較計画(CMIP6)に参画する33種類の最新の気候モデル実験出力を解析することにより、ENSOに伴う雲・降水の特性の気候モデルと観測の整合性について調査している。大気海洋結合モデル実験と大気モデル実験の比較から、大気モデル実験では結合モデル実験よりも基本場バイアスが極めて小さいにもかかわらず結合モデル実験と同等の大気内部のフィードバックバイアスが存在することを発見した。また、より直接的なENSOフィードバックの調査手法の一つとして、ENSOを現実的に表現する中程度に複雑な熱帯気候モデルの開発にも米国ハワイ大学と共同で取り組んでおり、ENSOに伴う大気の変動および大気内部変動の現実的な再現性を確認することができた。今後、大気フィードバック調節によるENSO特性の理解につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、学術論文を気候モデルバイアスについて1件と中程度に複雑な熱帯気候モデルについて1件、計2件を準備中である。いずれも近いうちに投稿される見通しが立っている状況であり、年度内に一定の進捗があったといえる。一方、当初の計画1年度目から3年度目にかけて予定しているスーパーコンピュータを用いた一連の全球気候モデル実験の実施にはまだ至っていない。ただし、米国ハワイ大学の研究者と実験の計画について初期的な議論しており、今後は国際研究として発展する見込みがある。以上のことを踏まえて、おおむね順調に本研究課題の進展があると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、CMIP6の気候モデルの実験出力の解析を行うことで大気内部のフィードバックバイアスを明らかにする。この成果は学術論文として投稿するとともに国内学会や国際学会での発表を行う予定とする。また、この研究内容の発展として、ENSOの将来変化予測の不確実性低減に試み、その結果が得られれば学術論文としてまとめる予定である。 また、中程度に複雑な熱帯気候モデルの開発・利用は当初の研究計画にはないものの、ENSOの大気フィードバックを比較的容易に陽に制御可能なソフトウェアとして大変有用であることから、本研究の目的を果たす新たな手法となりうる。今後、米国ハワイ大学との国際研究として発展させていく予定である。 一方、まだ実施に至っていないスーパーコンピュータを用いた全球気候モデル実験については、大気だけでなく海洋表層の諸過程のバイアスにも同時に着目する必要性を共同研究者と議論しており、今後2年間は、実験内容を当初の予定から再調整してENSOの諸過程の評価に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
データバックアップ用の物品を予定通り購入したが、投稿準備中の学術論文が1年度目の間に受理に至らなかったため、次年度使用額が生じた。これについては昨年度予定されていた学術論文の出版費用として使用される見込み。翌年度分として請求した助成金は、成果発表のための旅費および他の学術論文出版のための費用として主に使用される予定。
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Research Products
(1 results)