2022 Fiscal Year Research-status Report
中緯度西岸境界流域における塩分変動のメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K13997
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
木戸 晶一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 研究員 (40878394)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 海面塩分変動 / 高解像度海洋モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は日本南岸の海面塩分の経年変動に関する研究に主に取り組んだ。まずは観測データの解析を行ったところ, アルゴフロートのプロファイルに基づき構築された水平解像度100km程度の格子化データでは, 渦・前線構造に伴う塩分偏差が空間方向に平滑化されてしまい, その特徴を正しく表現できていないことが明らかになった。そこで, 塩分の時空間変動に本質的な役割を果たすと考えられる, 海洋中規模構造を陽に解像することができる高解像度海洋再解析プロダクトを設計するに至った。現場観測による水温・塩分プロファイルおよび衛星観測による海面水温・海面高度データを渦解像海洋モデルに同化することによって, 1993年1月から現在に至るまでの期間について, 海洋上層の状態推定を行った。その結果, 日本南岸域における海面塩分偏差が亜熱帯域から黒潮の流路に沿って伝播していることが確認できた。さらに, 季節によって海流場が変動することに伴って, 伝播特性は月ごとに異なることも初めて明らかになった。また, 夏季には黒潮に沿った移流に加え, 海面における淡水フラックスも海面塩分変動に重要な役割を果たしていることが明らかになった。上で述べた特徴的な塩分変動は, 他の高解像度海洋再解析プロダクトでも同様に見られたものの, その細かな特徴がどの程度再現されているかはモデルの水平解像度に大きく依存していることが明らかになった。今後, 追加解析や海洋モデルを用いた実験を通じて, さらに塩分変動の要因について詳しく調べていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた日本南岸における海面塩分の経年変動に関する解析が順調に進行していることに加え, 高解像度海洋再解析プロダクトの構築も年度内に終わり, その記述論文が国際雑誌に掲載されたことから, 予定していた研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは日本南岸における海面塩分の経年変動について, 構築した高解像度海洋再解析プロダクトを用いてさらに詳しい解析を進めた上で論文に取りまとめていく予定である。また, 他海域における変動についても調査を進めつつ, 必要に応じてモデルを用いた感度実験の設計・実行にも取り組んでいきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により学会・シンポジウムが中止となったため, 使用しない旅費が発生した他, 半導体の品薄によりHDDを予定通り購入することが出来なかった。来年度は出張の機会が増えることが予想されるので, 旅費の使用に充てたいと考えている。
|