2023 Fiscal Year Annual Research Report
火山熱水系の物質科学に基づく噴火発生予測モデルの構築:水蒸気噴火減災に向けて
Project/Area Number |
21K13998
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
井村 匠 山形大学, 理学部, 講師 (20878524)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 山体地質 / 熱水変質帯 / 火山層序 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる本年度では,蔵王・吾妻・安達太良の3火山で得られたこれまでのデータ,その解釈を検証し,研究全体の総括に集中した. 蔵王火山では,これまで未詳であった山形県側の火山性流体経路について,宮城県側のもの(Imura et al., 2023, JVGR)との関係性の検証を進めた.現在噴気活動は認められないが,仙人沢,蔵王沢,祓川流域にて,宮城県側丸山沢と同様の噴気・地熱変質帯の痕跡を認識した.特に,蔵王沢ではかつて硫黄を採掘していた蔵王鉱山があり,周辺一帯は著しく熱水変質を被っていることがわかった.これらの存在は山形県側にもかつて広範囲に及ぶ噴気・地熱活動があったことを意味する.それを担う流通経路の存在も同時に示唆されるが,現在は閉塞状態にあると考えられる. 吾妻火山では,本研究および別プロジェクトによってこれまでに得られたデータに基づき,鎌倉噴火(1331年)以降の噴火履歴・火山層序を大幅に更新した.17枚ユニットを越える多数の噴出物を発見し,さらにそれらの一部がこれまでに認識されていなかった小火砕丘によるものであることを明らかとなった.いずれの噴出物もマグマ水蒸気噴火~マグマ噴火の様相を示しており,噴火時には熱水とマグマが直接的に接触,爆発した産物であることがうかがえる.これらの大幅な更新は2023年度の日本火山学会にて詳細を公表したところであり,現在論文化を急いでいる. 安達太良火山では,これまでの地質記載データと全岩化学組成データを見直し,成果取りまとめを進めた.多くの点で蔵王火山と類似するものの,開析の程度は蔵王よりも進んでいるため,地表表層よりもやや深い熱水系の頂部付近に相当する岩相を認識できている.この点についても現在論文化を急いでおり,投稿直前の最終チェックの段階である.
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