2021 Fiscal Year Research-status Report
土層の生成から流出までの循環過程にもとづく新しい山地保全技術の開発
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21K14001
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
渡壁 卓磨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10883663)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土砂流出 / 土層生成 / 土砂収支 / 水文観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
土砂災害に対して脆弱な地質である花崗岩の山地源流域を対象にして、流域内での土砂収支を計算するために、基盤岩の風化に伴う土層生成量の推定と降雨時に流域外へと排出される土砂量を調べた。研究対象流域は、面積1 ha程度で、森林に覆われている環境である。土層の生成量を調べるために、高解像度の数値地形モデルを用いた地形解析と土層厚の実測を組み合わせることで土層厚の空間分布を推定し、宇宙線生成核種の分析によって得られた土層の生成速度関数に基づいて流域内での一年あたりの生成量を推定した。降雨時に流出する土砂量を明らかにするために、流域出口に流量観測用の堰と堆砂プールを設け、そこに溜まった土砂量を実測した。また、土砂流出のタイミングと堆積状況を捉えるために、インターバルカメラを設置した。2021年8月から観測を継続しており、これまでに900 kg以上の土砂が約1 haの流域から排出されている。強雨が観測された8月から9月に土砂流出は集中しており、10月から3月までの雨量強度の小さな時期の流出量は総量の1割にも満たない。10分間に5 mm以上の雨量が観測された場合に活発な土砂移動が生じており、ピーク強度が大きくなるほど土砂流出量は多くなった。同程度の降雨ピーク強度のイベントを比較した場合、ピーク後にも強雨が継続するイベントのほうが土砂流出量は多かった。これまでに流出した土砂量は基盤岩の風化によって生成される土砂量の半分以下であり、その多くは崩壊予備物質として流域内に蓄積されていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の肝は、土砂流出量の直接観測であり、このデータが得られて初めて試験流域内での土砂収支の計算が可能となる。土砂を捕捉するための堆積用プールを自作し、流量とともに土砂流出量の観測を始め、土砂収支を計算するためのデータが着々と得られている。インターバルカメラを設置することで、土砂移動のタイミングも観察することができた。これにより、土砂流出の実態について詳細に解析することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
年間を通した土砂流出特性を把握するために、引き続き土砂流出の観測を継続する。また、異なる環境下における水および土砂の流出特性を把握するために、人為的な森林荒廃から回復しつつある流域および地質の異なる流域も加えてデータの取得や解析を行う。
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Causes of Carryover |
新形コロナウイルスの感染状況や緊急事態宣言を考慮して広島への調査出張を控えた。次年度に投稿予定の論文の英文校閲費用および広島への出張費として、使用する。
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