2022 Fiscal Year Research-status Report
土層の生成から流出までの循環過程にもとづく新しい山地保全技術の開発
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21K14001
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
渡壁 卓磨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10883663)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土層生成 / 土砂流出 / 山地源流域 / 花崗岩 / 宇宙生成核種 |
Outline of Annual Research Achievements |
花崗岩を基盤とする流域面積が1ヘクタール程度の山地源流域において、通年で土砂流出を観測することができた。2022年1月から12月までの期間に、堆砂プールに堆積した土砂量は、1600 kg以上であった。一度に500 kg程度の土砂を堆砂できるプールを設置したが、1時間雨量が30 mmを超える強雨イベントでは満砂か満砂に近い状態になることがわかった。強雨が観測される7月から9月までのあいだに、土砂流出は集中していた。水流の発生点から堆砂プールまでの河道には、岩盤が露出している場所はほとんどなく、河床は常に薄い土砂に覆われ続けていた。このような状況を維持するためには、強雨時に生じる河道沿い急斜面の小規模崩壊などの一時的なイベントや土壌匍行などによって、斜面から河道へと土砂が供給されていることを示唆している。 土層の生成に関して、宇宙線生成核種Be-10の核種生成率の導出における最新の方法論を用いて、土層の生成速度を再計算した。新しい方法論では、古地磁気強度の時間変化の影響が組み込まれただけでなく、核種生成率の基準となる高緯度海水準地域の値の変更がなされている。土層の生成速度は、土層の厚さが増すほど小さくなるというこれまでの計算結果と同様の傾向があるものの、これまでの速度の2分の1程度になることがわかった。このことは、本研究で用いた値だけでなく、これまでの研究によって得られた地表面露出年代や侵食速度などの値が、新しい方法論で再計算することによって変わりうることを意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土砂流出の観測を通年で実施でき、年間土砂流出を入力値として取り扱うことができるようになった。このため、山地源流域における土砂収支を評価するためのタスクのひとつを終えることができたといえる。また、新しい方法論に基づいて核種生成率を再計算したことによって、より確からしい土層の生成速度を得ることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
流域内の多地点で土層厚を実測し、高解像度の航空レーザー測量データと実測値をもちいて、土層厚の空間分布を明らかにし、流域内での土層生成量を適切に把握する。これまでの土砂流出観測の結果と組み合わせることで、土砂収支を計算し、山地保全状況を評価するための指標を示すことを試みる。
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Causes of Carryover |
納品の金額の変更などがあり、少ない金額の残額が生じた。次年度の物品購入費あるいは旅費として使用する。
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